アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
妹島次は、ニューヨークから北に1時間くらい行ったところある、ニューキャナンという街での計画です。ニューキャナンはフィリップ・ジョンソン(1906〜2005年)の「ガラスの家(1949年)」がある街です。クライアントは個人で財団をつくっている方々で、教会とコミュニティセンターを合わせたような建物の依頼でした。昔のアメリカでは、日曜日の午前中にいろいろな地域の人たちが教会に集まって、教会が地域センターのような役割を果たしていたのですが、現在ではそうではなくなってしまいました。そこで、祈るための場所でもあり、地域の交流センターでもある、多目的に使われる建物をつくりたい、という話を受けてこの計画が始まりました。
彼らが買った敷地は、元もと競走馬の練習場や飼育をするために使われていた場所で、とてもきれいなところです。敷地には高低差が30メートルくらいあって、森や湿地、大きな池など豊かな自然があります。
建物は自然豊かな敷地の中を巡る散策路のようなっています。ダイニングやライブラリー、体育館、サッカー場、野球場、屋外シアター、人が集まれる小さなスペースなど、敷地にちりばめられているさまざまな機能を繋いでいく構成です。そういう諸室が、ランドスケープの中をゆっくり丘まで上がっていく大屋根の下に、点在して置かれています。まずエントランスと受付があって、横に体育館とライブラリーがあります。逆側にはダイニングがあり、食事をしたり話し合ったりする場所として使われます。さらに進むとホールです。その先に教会の機能を持つ、多目的にも使われる場所があります。それぞれの場所で、湖が見えたり、湿地が見えたり、美しい森をくるむようにしながら地形を上がっていく建物です。
西沢屋根の下の多くは外なのですが、ところどころガラスや不透明な壁で仕切って室内空間をつくっています。
ニューキャナンは、木造文化の歴史があるところです。この街の教会がみんな木造ができているのを見て、われわれも木造にチャレンジしたいと思い、柱はスチールなのですが、屋根はこの地域の集成材を使った木架構にしています。
妹島すごく長い建物なので、基本的には直線材を使って屋根を構成していますが、それを敷地に平行に架け渡していって、全体を繋ぐと緩やかな曲面ができ上がるようなつくり方をしています。
体育館は天井が高く、この環境の中であまりにも大きくなってしまうので、地面を半分掘って屋根の高さを維持することにしました。周りから体育館を覗くと、子どもたちが遊んでいる様子を見下ろせます。
西沢各機能は異なるレベルに置かれ、それぞれに湿地や谷に向かう異なる眺望があります。各機能が大屋根によって繋がっていくことで、ひとつのコミュニティとしてのまとまりになることを考えています。地形に沿っているわけではなく、等高線を横切って上がっていくかたちなのですが、全体として山から水が流れてくるような、地形に合っていると感じられるものをつくろうとしています。