アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
はじめまして、高松です。
今日は現在の心境、あるいはこれからの高松をお見せしようと、かなりのヴォリュームでスライドやビデオを用意してきております。
独立して設計事務所を開いてから今年でちょうど13年になります。その間にどれぐらいの仕事をしたのか、ということで先日ナンバリングをしてみたところ、自分でも驚きましたが、約200軒の建物の設計をしてきました。その中でも実際に建設されて完成したものは約六割です。それでもその数の多さに自分でもびっくりしております。
このところずいぶん長い間、講演のお誘いをお断りし続けてきたんですが、今回は、これまでの作品を自分なりに整理をしてみる機会にできればと思い、お引き受けすることにしました。したがって今日の話は、小説でいえば初校というか、下書きのような感じになるかと思います。ひょっとすると、これまでの私の軌跡のほんの一部しかお見せできないかもしれませんが、小説というのも、下書きのほうがはるかに面白いといわれますから、そういう感じで楽しんでいただければ、と思います。
少し前に、関西のある出版社があるアンケートを企画しました。ここにはいらっしゃらないので思い切っていいますと「安藤忠雄さんと高松伸の比較」という企画で、まずはお互いの支持率を調べたわけです。
世代毎の支持率の統計をとって、十代から七十代くらいまで十年ずつに分けてグラフにしてあるんですが、安藤さんのグラフは十代が非常に少なく、尻上がりに七十代までスムースな線を描いている。とこるが、僕の場合は十代から二十代までがいちばん多く、それが次第に下がっていって六十代から七十代にかけてまた上がってくるんです。これを見て、「とりあえずは若い人に人気があるんだから」と内心ほくそえんでいたんですが、よくよく考えてみると、支持率の高い十代というのはまだお金を持っていない世代だからクライアントになり得ない。もう一つの六十代から七十代というのは財産の贈与を終えた後の世代だろうと気付いて、あまりよろこんではいられないな、という気分になりました。
面白いことに、二人がクロスするところが世代としては三十代から四十代の辺りなんです。今日ここにいらっしゃる皆さんはだいたいその辺の世代のかただろうと思います。僕の話を聞いて、どちらを支持されるか決意していただこう、という意図を含めてお話してみたいと思います。
今日はスライドと、予め建築の空間的な状況を視覚的にチェックするために作成している、コンピューター・グラフィックスを使ってお話します。これまでの高松伸ではなくて、これから何を考えていこうとしているのか、を見ていただければと思います。