アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
僕が育った家は国鉄、いまのJRの近くにあり、鉄道敷きの中で野球をして遊んでいました。悠長な時代だったわけです。だから機関車や機械は、僕にとっては子供の頃から非常に強いインパクトを持つ存在です。機械のある一部分が持つ、言葉で表現し得ない、何とも表現し難いものに対する興味は未だに強く持っています。
これまで紹介させていただいた作品よりずっと以前に設計したもので、機関車をアナロジカルに表現した建築に、京都伏見の「ARK」という歯科医院があります。敷地のすぐ横に鉄道が走っているため、建築と電車のどちらが動いているかわからないというシチュエーションに建っています。この当時は「形の力学」という言葉を使っていました。形によってある種の力の配分、力のあり方がつくれるのではないかと考えていた時期です。
僕は技術者の描く図面が非常に好きです。二十世紀初頭の技術者がどんな図面を描いていたかというと、時として過剰な形を描き込んでいる場合があります。
その当時の技術者は往復運動にしても回転運動にしても、単純な形ではなく、その運動もしくは力を、視覚的な存在たらしめようと大きな努力をしてきたように思います。技術者たちによるこのような図面も、「形の力学」によって建築をつくる上で随分と参考になっています。
「ARK」の側面では、繰返しによって力をつくり出すということをやっています。
この「ARK」と同時に設計した建築「PHARAOH」でも、全く同じことを考えてデザインしています。クライアントはお互いになんの関係もありません。
僕は建築の外部と内部は全く異なる世界であると捉えています。内部は一種の閉じられたミクロコスモスであり、外部は都市の一部である。したがって、もちろん根本的には私有財産には違いないが、イメージとして外部は公共財産であろうと思います。
「PHRAOH」の内部では、体温が下がるような空間を意図しました。敷地は京都の随分と交通量の多い場所です。元々クライアントは木造家屋で生活しておられました。ところが、その木造家屋にときどき車が飛び込んでくる。そこで京都でいちばん頑丈な建築をつくる建築家は誰だ、ということで僕が指名されたわけです。したがって、その時のクライアントの要求条件はただ一つ「高松さん、頼むから私たちの生活を守って下さい」ということでした。そこで僕は少々過剰に生活を守る結果になったわけです。
実は、僕は映画気違いです。暇さえあれば映画を観ます。なかでも最近はピーター・グリーナウエイの「コックと泥棒」や「ブラジル」といった映画が最も好きです。両方とも架空の空間の中で、閉じられた物語がとめどなく凶暴に進行するという映画です。もちろんストーリー自体も面白いのですが、その舞台セットにたいへん興味を覚えました。
名古屋で設計した「Dance Hall」という名前のディスコがあります。インテリアの仕事としては初めてのものです。素材として徹底的に鉄を使いました。天井高が二・三メートルしかないガレージの、その低さを逆に利用し、シールドビームを床に二千個埋め込んで、床から降る光の中で踊るというシチュエーションでデザインしています。さらに床から降る光をキーボードにつないで、それを手で演奏します。つまり音を弾くと同時に光を弾き、それを身体で直接感じてもらう空間です。
日本古来からの遊戯施設であるパチンコ屋の建築です。
まず、その第一号は1,500坪の規模で台数は300です。二階には本屋があります。プログラムの段階で本屋とパチンコ屋を強引に一緒にしようと提案したところ、それが実現しました。パチンコで勝利を治め、若干後ろめたい気持ちを、家族に本を買って帰ることで帳消しにしていただく、という単純なシステムを商業的に成功させた例です。
クライアントはその成功に味をしめて、二軒目をつくりました。やはり300台入っています。因みにこの二軒目の店は建て替えですが、以前に比べて売り上げが三倍に伸びました。そのほとんどが女性客だそうです。
さらに味をしめて三軒目です。この場合はそれぞれ400台の、ブルーとレッドの二店舗が計画されました。二つの店舗とも地下にあります。地上はすべて駐車場という、非常に特殊な構成です。