アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
群馬県邑楽町で、町役場と多目的ホール、議会棟などが集合した施設のコンペがありました。全部で一万平方メートルくらいの施設です。このコンペを担当された方は、群馬県の職員で、今までとは違う新しい形式のコンペを次々に実現しています。この邑楽町役場庁舎のコンペは新富弘美術館のコンペに続くもので、審査には委員長の原広司さんをはじめとして、中川武さん、長谷川逸子さん、倉田直道さんの四人があたられました。
私は、このコンペに是非参加したいと思ったのですが、それはコンペの要綱に、原さんの「提案は他者のさまざまな見解を受け入れることができるシステムをもっていなくてはならない。さらにそれは新しい美学を実現するものでなくてはならない」というメッセージが書いてあったからです。
多くの人のさまざまな見解を受け入れるためには、その建築自体が許容範囲の広いシステムをもっている必要があります。しかし、だからといって、多くの人たちの意見を開いて凡庸な建築になってしまっては仕方がありません。みんなの意見の平均値のようなところを採用しても、結局は誰も満足しない建築ができてしまいます。
住民参加でいい建築をつくるのは非常に難しい。それは、そこに建築家という主体性がなかなか参加できないからです。こういう建築にしたいという主体性が建築家の側にはあるべきで、その建築家の側からの提案があって初めてコミュニケーションが成り立つんだと思います。その主体性に対して賛成の人も、反対の人もいて、コミュニケーションが成り立つのであって、ないところからは何も始まらないのです。もちろん建築家の主体性だけで建築ができるわけではありません。しかし、住民の意見だけでも建築はできないのです。建築家の主体性を保ちながら、多くの人たちの意見を聞いて、それによってまったく新しい建築が出来上がっていく可能性はないだろうか、というのが原さんからの問いかけだったと思います。
原さんのこのメッセージは、今われわれが抱えている課題を象徴していると思って、私はこのコンペに参加しました。