アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合

東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

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私の建築手法
山本理顕 - 設計のプロセス
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東西アスファルト事業協同組合講演会

設計のプロセス

山本 理顕RIKEN YAMAMOTO


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埼玉県立大学

その逆に、埼玉県立大学では、最終ユーザーである先生となかなか会えず、むしろ営繕課の人たちといっしょに設計を進めていきました。

この大学は福祉と看護のための大学で、長さ300メートルほどのリニアな建物を敷地の南北に並べました。北側が大学棟で南側が短大棟、南側に突き出た部分が体育館です。まわりがすべて田んぼですので、その風景に馴染むようなるべく低く、四階建てにしました。

大学棟と短大棟の間に設けられた屋上庭園と大講義室を見る
大学棟と短大棟の間に設けられた
屋上庭園と大講義室を見る

大学棟と短大棟の間には、迷路状の街路を設け、それに沿って実験・実習室を並べました。その屋上はウッドデッキと芝草からなる庭園としています。潅水装置を設けたり、陽の当たる時間の短い部分にはビンカミノールという地被類を植えて、緑を絶やさないようにしています。

大学棟と短大棟とは別に、食堂や講堂、事務室の入る棟を敷地東端に設けました。この棟の西側をフォーラムと呼んでいますが、ここからスロープで屋上デッキに上がることができます。

短大棟から屋上デッキに突き出たかたちで大講義室を設けました。180人程度入ることができます。図書館は屋上デッキの下部に設けましたが、天井高を高くしたい部分があり、そこは床を1メートル下げました。

ここでは、約22センチ×60センチ角の細いプレキャストコンクリートの柱を用いていますが、そのスランプは3、4程度です。一般に用いられるコンクリートのスランプが18程度ですから、いかに高強度かがわかっていただけると思います。スランプ試験をしますと、コンクリートが横に広がらずに、上の部分が少し傾く程度なのです。私もそんな光景は初めて見ました。工場でスチールの仮枠をつくり、そこにコンクリートを入れて型枠全体を揺らすので、非常に硬いコンクリートが打てるのです。

迷路のような一階。正面に人型のアートワークが置かれている
迷路のような一階。正面に人型のアートワークが置かれている
大学棟のメディアギャラリーを 二階レベルより見る
大学棟のメディアギャラリーを 二階レベルより見る
講堂の内部よりフォーラムと 屋上庭園を見る
講堂の内部よりフォーラムと 屋上庭園を見る

大学棟、短大棟にはさまざまな機能が入っていますが、それをつなぐのが四層吹抜けのメディア・ギャラリーです。その上部はフィーレンデール・トラスというトラスになっているんですが、天井の懐が2メートルくらいあります。その上と下にガラスを張って、この中に空気が溜まるようにしてあります。冬場はここに溜まった暖かい空気をダクトで下ろし一階床下から吹き出し、逆に夏場は空気溜まりに設けたダンバーを開放することで、熱気を積極的に外部に排出するようにしています。

 

また、夏場は排出された熱気の代わりに外部に設けられた給気塔から空気を入れ、地下を通して加冷したのち床から吹き出すようにしています。これにより冬場、外気温が8℃くらいの時に18℃くらいの温度が得られますし、夏場の体感温度も外部より2、3℃度低くなります。これほどの規模でのパッシブソーラーは、日本でも初めての試みです。これは総合設備の西脇康夫さんという方をコンサルタントに招いて開発したシステムです。

先生方が使う三、四階の研究室は冷暖房をしているのですが、そのリターンはメディア・ギャラリーに流れるようになっています。先生がたくさんいる時にはメディア・ギャラリーも適度に空調されますし、夏休み期間など先生があまりいない時は、メディア・ギャラリーもあまり冷えません。省エネルギーで合理的な設計になっています。

サイン計画には廣村正彰さん、アートワークには宮島達男さんほか多くの人に参加してもらいました。チャールズ・ロースというアメリカのアーティストは、校内にプリズムを仕掛け、人工的に虹をつくりました。春夏秋冬どんな季節でも晴れた日には虹が落ちます。普段はあまり気づきませんが、歩いていて、急に白いTシャツが虹色に染まると、ちょっとびっくりします。

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