アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
「イエノイエ(2008年)」という住宅のプロトタイプの提案では、先にお話ししたような屋根の持つ人工物でありながら自然物でもある点に着目し、屋根がつくり出す自然環境のような場所をそのまま建築化することを考えました。1階に個室が3つあり、それぞれの個室は2層になっていて、下部はプライベートな活動に、上部は比較的オープンな活動に当てられます。それぞれ個別の階段で上部へ上がることができ、上部は屋根に囲われ緩やかに区切られています。屋根の谷線によって他の個室の上部空間を見通すことはできませんが、屋根の開口からいったん外部を介して向かいの部屋が見えます。半分洞窟の中のような空間に暮らす家です。同じような考えの延長線上で、コンクリートの集合住宅「Alp(2010年)」をつくったこともあります。屋根や階段、壁の凹凸を、雨水によって生成される自然の地形に見立て、その中に人びとが住み込むことをイメージしました。屋根や階段、壁等のさまざまな斜めのラインを室内に現すことで、内部空間を緩やかに屈折させ奥行を表現しました。また、「Gallery S(2008年、計画案)」では、ひだを持つ1枚の面で空間を区切り、ひだの中で暮らすというテーマで建築を考えました。ギャラリーやアーティスト・イン・レジデンス、ビューイングルーム、カフェ等を備えた計画です。ひだの原理としては、「Chair “Csh”(2008年)」という、国際的なアートフェアであるフリーズ・アートフェアのためにつくった椅子のアイデアと同じなのですが、ひとつの面からひだがつくられ、それがさらに幾重にも枝分かれしてどんどん細かくなっていくフラクタルな形をつくった時に、この原理を直線に置き換えると、建築でも活用できるだろうということを考えました。
「イエノイエ」北西側から見る。屋根面には、不定形な四角形の開口が設けられている
「イエノイエ」2階書斎から屋根の開口を通してキッズルームが見える
「イエノイエ」屋根状
「イエノイエ」断面
「イエノイエ」1階平面
「イエノイエ」2階平面
「Alp」北側公園から見る。11戸の集合住宅
「Chair “Csh”」模型
「Gallery S」模型