アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合

東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

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六角 鬼丈 - 「地・水・火・風・空」
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東西アスファルト事業協同組合講演会

「地・水・火・風・空」

六角 鬼丈KIJO ROKKAKU


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東京武道館のこと
2
屋根の重なり
屋根の重なり

実際、武道館の芸術性豊かなものをつくるといったものの、どうやれば武道館に相応しい形態とか、武道館らしいものが得られるのだろうかということになり、それで、いつも私の場合は若干いっていることと、自分が思い付くひらめきとの差はどうしても出てしまうんですが、いくつか否定語的な観点からものを考えていきました。今までの武道館のイメージではどうも日本の伝統様式をまるまる受け継いでいる。それでどうしても武家屋敷や城郭的なイメージになったり、若干神社仏閣的なイメージ、もしくは日本の伝統様式的な木組、屋根、形態を取り込んでつくられた建物が、武道館なんじゃないかというふうに感じていたのではないか。武道熟成の時代は武家社会が主力であって、どうもそういう匂いが残る。人のやったものをどうこういうわけではありませんけれど、東京のイベントの中心になっています日本武道館は夢殿を模したものですが、そういったものが日本の伝統様式とはいえど、どうもひとつの社会の権力性という言葉もあまり良くないですけれど、いわゆるひとつの力をもっていた構造がつくりだすシンボルイメージがぬぐえない。今日つくる場合はそういうものを退けてみたいという気持ちがある。外国でいいますといわゆるシンボルっていうとピラミッドを例に出す、そういうイメージとよく似ているのですが、とにかくそういうものでシンボルを考えたくないというのがありました。

それじゃあそこで、もう少し別な視点で形が生み出すために、背景を別なところに求めてみたい。それでいい始めたのが雲海山人という言葉でした。それは形が出てくるときの自分の中での背景みたいなものが武道イメージと重なっていったときに城郭とかそういうものを通り越してしまって、日本の情景にある山海の自然観、もしくは空の雲とかのいわゆる精神的な風景、いわゆる武道の形とか身体的なことも全部含めてどこかで水の流れと重ねるとか、自然のもっている現象とか形態、リズムとか、そういうところに自分のイメージの根源を求めてみたいという思いが湧き出てきた。実際海や山や雲をつくるわけじゃなくて、あくまで自分の形態を生み出すためのひとつの背景といいますか、幻影的なモチーフとしてずっと頭の中で捉えていったんです。実際建物はいろいろな諸条件から変化、吸収してつくられていったわけですが、そういう作業の流れの中でもイメージの中に雲海山人という言葉をひきづっていったわけです。

コンセプトスケッチ
コンセプトスケッチ

それで形態を構築する手段であるモチーフとして菱形を分子構造として選択し、菱形を山のように積み重ねていったわけです。それは造形的な意味では、形をつくるときに単位を集積させて組んでいろいろな形を編み出す構成的意図もあるけれども、自分の中の造形の底辺にあったのが先ほどいいました雲海山人みたいな、山とか海とかがもっている原風景的な記憶的なイメージと、それからもうひとつは伝統文化をひとつの施設にまとめてひとつの建築物に構築するときのテンションとしての働きといいますか、吸引装置みたいなもの、そういうものを武道館の中に埋め込んでいきたいと考えはじめていました。 実体はないんですが、自分の中でもうひとつ願望していたのが、伝統的な問題に引っ掛かったときに伝統っていうのはどうも形や形式だけをいわゆる継承していく。これはまあ様式的な面ではあるのですが、武道というものを捉えてみますと形とか形式以上に精神構造とか、われわれ人間の中に遺伝的に記憶されてしまっている、日本人が武道といえば何となく通じてしまうような、はっきりした言葉ではいえないけれど、そういう記憶性みたいなものを潜在的にひきづっていると思えるんです。そういうものは実は武道愛好家の方とか武道をやっている人たちの中には増幅されずっと生きづいているんだと思うんですね。それを大上段に構えたいい方をしますけれど、自分の考えた武道館の中に少しでも吸い付けてゆきたいという気持ちがあり、完成する武道館が電磁石的にいえば磁気を帯びたような建物で、可能ならば建築の空間の中に何か引き付ける吸引装置みたいなものがあって、それを通して世の中にあるいろんな人たちの精神、遺伝子とどこか反応してみたい。それが武道館をつくることで少しずつでも吸収されていって、武道愛好家たちの中に残っている記憶、もしくは遺伝子因子みたいなものと自分の計画する武道館がどこかでテンション関係で結ばれていって欲しいという思い入れなんです。ちょっとまどろっこしいいい方になりましたけれども菱形の断片を選ぶことで、それが無数に積み重なっていくようなイメージでひとつの施設をつくる。それによって何かイメージとして磁気みたいなものが発生して、武道館界隈にひとつのエネルギーっていうか磁場みたいなものが発生してくれるといいと思いました。これはまるで建築論になっていないような話に聞こえるかも知れませんが、ずっとそういうイメージと願望みたいなものがありまして、それが今度の武道館を遮二無二つくりあげていった、自分の中のエネルギーの大きな要因になっているんじゃないか。と思いこんでいるわけです。

この後スライドをやりながら説明をいたしますが、スライドを今日は多く持ってきています。その理由というのは建物のすべての面が全部表情が違っていまして、建物をぐるぐる回して皆さんにご理解いただくのにちょっと大変なんです。それでスライドの順序が復難になってしまいますが細かいところというより総体として今話したような理由が若干でも伝わればと思っています。

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