アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
二階は剣道場です。床は40ミリの赤松の無垢板を使ってます。周囲はナラ材で黒っぽく染めているのは最初は白木ですが、7、8年経つとだんだん黒味を帯びて黒っぽくなってくるので調和させるつもりで計画しています。
閉じられた空間なので、古臭い手法ですけれど内側に軒があって、ここを外部的な空間に反転するようにつくりました。
上段の丸窓は上部についている丸いトップライトから45度傾いた鏡に反射させたもので、光は水平に入ります。
この方法はかつて大雪展望塔で螺旋階段を45度傾むけた鏡に映したときに、効果が分かりうまくいきましたので、ふたたび使った方法です。
弓道場の入口、ここは外側に使った竹垣が内部に侵入して、内側からまた外側に抜けるというイメージです。実際は思ったよりくせが強くちょっと難しいテクスチャーになったと思っています。ただ最近、武道具の弓であるとか竹刀がほとんどプラスチックやカーボングラファイトに変ってきて、実際材料が少ないことと壊れやすいことなど理由があるけれども問題は多く残ると思うし、今後伝統文化というものをどういうふうに考えていくか、私のほうからもそういう人たちに逆に問い掛けたいという気持ちがあったんです。
弓道場は奥に審判団の席があり、競技者は射場から左に向かって撃つわけです。ここの控えは一段段を上げてつくってありますが、こういうタイプの弓道場は一般的にあまりありません。どういう形式かというと通常は控えを含め床がフラットで大会時に大勢の人たちがずっと並んで次から次へ撃っていける。もしくはぞろぞろ並んで繋がっていけるスタイルです。つまり今の武道館のスタイルをとろうとすると大会主導型になって、大会運営が非常にしやすいということにあります。したがって個人的にとかグループで来て気持良く撃ちやすい空間とは思いません。そこで両方使えるようにということでわれわれは主張させてもらい段のついた控えをつけさせてもらいました。この手本といえる弓道場が鎌倉の閻魔堂にあって、上段にお坊さんが座って、この下で弓を構え砂と石の名園を飛び越して撃つという禅的な弓道場があって、そこからヒントを得たものです。
的場は両側・上部とも防御ネットで囲まれています。このネットの位置は上部で遠的の矢を取りにいっている間に下から矢が飛び出ないようにするとか、ある高さ以上には矢を出さないと、そういう防御壁が二重・三重構造に装備されています。
上から撃つ遠的場は、ここは先ほど話しました閻魔堂と同じスタイルで、少し下がった床から撃ちます。
いかにも頑丈な手摺がついていますが、ここから遠くに飛ばすときに失敗して下に撃ったり、下の的に取りにいっている人に当たらないようにというガードになっています。何でそこまでしてガードして狭い敷地の中でつくるのか、70メートル撃たなければならないのかという疑問は未だに残っています。ところが遠的場はつくらないわけにはいかない。私がこの仕事を受ける約一年ほど前から建設委員会の各専門家が集まって検討しているわけですが、委員会では本当に納まるかという話ではなくて、遠的場が必要という理由だけで設計者に渡されるわけです。敷地は水位が高く、地下化はコスト的にも困難な中で実際どうやっても納まらない。それで苦肉の策から二段式を考案し、こんなに大きなフレームと、とんでもない建設費をかけてつくらなきゃあならないんだとする考えが一方にあります。しかし、現在の土地価格を考えるとものすごく高いわけですから、比べればこのぐらいのフレーム代は安いものだという話と両方あるわけです。なかなか片方だけでは答えが出ない、こういうことをやると不思議な世の中だなあと、つくづく思います。
実際つくると、こういうふうに回りも規制されて、上部も規制された不思議な的場ができています。今まで遠的というのは野山でやっていましたから、何の目標物もないところで撃つわけですね。ここでは弓矢を撃つ人が、この辺から上部のフレームの何センチ下がった所を狙えば当たりやすくなるという判断もできて心配もありました。でも、実際射っている状況をみたり、聞いてみると、皆、的に集中しやすいという話で、心配の必要もないようです。