アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
先ほど天井模型の話をしましたが、私が一番苦労したのは軒裏なんです。最近の建築で軒裏が出てくる建築というのはほとんどなくなって軒を出してしまうとだいたい始末におえなくなる。日本の伝統建築はいわゆる肘木であるとか垂木その他の桝組を含めて、工法的な部分でかなり合理的に組んでいくプロセスで意匠と合わさってできていたわけですが、このくらいの建築物で軒裏の構造その物を露出して造形と上手く合致させると必ずしも経済的ではない。特にこの場合近隣との騒音問題があって屋内も天井は露出型ではいかない。どうしても遮音性を強化しなければならないということで天井を張っています。天井は仕上げ材として出てきてしまうので見上げたときの天井のデザインに多分にエネルギーをかけたということがあります。
庇が出ると建物ってなかなかスマートにならないので、今度の場合それを力の表現に替えてしまおうと考えてきました。
これが横から見たディテールです。諸条件が寄せ集まった部分はそもそも納まらないので、固まりとしてとらえ全溶接の鉄板で処理しています。内部に連続して梁だけが受け梁みたいになっていますが、空調の吹き出し口へと繋がり奥の方に繋がっています。
外灯の照明器具も建物に合せ菱形をモチーフにしています。駅前まで同じもので考えていていたのですが、残念ながら公園部は別の既製品になってしまいました。
各コーナーは自分としてどれくらいの状況で見えてくるか模型を主体に測定しながらスタディしたのですが、きちんと納めていくということではなくて、すべて屋根と下から立ち上がった素材が、全部突当り合わさったところでそのままぶつけた状況で見せています。複雑な状況は丸のまま複雑なまま表現してしまうという方法であえて中間物を挟むのを止めています。
これは東側の隅でさっきの階段室と反対側から見たところです。ここで私が苦労してしまったのは、連続性が切れてしまいそうな鼻先とか抉られてしまう部分なのですが、ここには尖りの爪を連続性をもたせるために付けています。これは機能性があるかというとまったく機能性ではありません。むしろ建築の形態としての流れの形態の表現上の必要物として設けているものです。
屋根の中段についている開口部等は天井裏の通気口になっています。外壁面から飛び出ている鉄板部はダクトです。地下の機械室から立上がって大屋根の天井裏を通って配管しています。
東側の中央部はイベント時の放送車や搬入車の出入口になっていて、設備のジャックその他がついています。ここから接続して上部にある視聴覚室と接続しています。屋根頂部のトップライトには上端にパイプがついていますが、これで空気を外に出しています。トップライト自身も排煙を兼ねて開閉型になっています。
屋根はどうしても複雑化して密度が上がってくるということがあって、下部のコンクリート壁をフラットのまま立ち上げるとバランス関係が上手くいかないということで、下半身とかディテール的にある程度密度を上げています。ペろんとした面ではなくてもう少し裾広がりな力を表現したいのでコンクリートも斜めに打たせ流れをつくっています。
これが先ほどのイベント用の搬入口です。ここが通気抜きです。ちょっとこういうのの東面も真中の一本だけが樋で、この二本が肘木になっています。ここだけはコストバランスから金属でなくてボード貼りになり、それでも全体の調子さえ合えばいいということで納めてあります。
エントランスの上には会議室があります。下は事務室で、さらにその下はドライエリアに面したトレーニングルームがあります。奥には屋根の中に剣道場があり、屋根より下の部分が柔道場になっています。
先ほどお話した「地・水・火・風・空」をテーマにして四人の作家に造形物をお願いしたわけですが、植栽の中にあるのは名古屋の作家で和田伸正さんの作品で、原始人のお金みたいな、陶器なんですが、こういうものがこの周辺のグリーンの中にころんころんと転がっています。土と火に関連した表現、そういうふうな意味合いで「地・水・火・風・空」とつながりをもたせようとしています。
外周の植物は笹を主体にしています。
小道場の中で、剣道というのは大きな太鼓を叩いたりするのと竹刀の音が大きくてなかなか防音できないんですね。それで開口部というか通風がとりにくく、軒裏部で通風となっています。山型状の断面のサッシュが入っていましてオペレーターで全部下に開くようになっています。
小武道場の屋根はさらに複雑な格好をしていますが、この上に高圧線が下がってて、それに引っ掛からないようにカットしながら調整しているので、当初の計画より複雑度が増しています。
近隣との遮音性が問題で、開口部も全部吸音パネルで、グラスウールの付いたボードなんですが、音を吸収するよう配慮してあります。菱形のモチーフが一個だけここにおっこちたようにみえますが、自転車の駐輪場です。本当はもう少しころころ下に落としたかったのですが、なかなか落ちる要素と場所がなくて落ち切らなかったようです。
西側に回って、これは今の開口部のディテールです。
ここも波型の消音壁になっていますが、柔道場の音が隣接のマンションに響かないように配慮したのです。
これは弓道の遠的の防御ネットです。
全面平でなくところどころ三角形に開いているのが特徴になっています。それはトラス状のフレームに斜めに貼る面と真っすぐに貼る面とを交互に両用すると、ちょうど矢を撃つ方向からは面になり見えなくなるわけです。そういう方法で開口部を多く設けることで風圧を防いでいます。
北側に回って弓道場の裏側にあたる部分、これが上のオープンデッキから下りてきて北側の公園に続く継ぎ場で池を配して水のイメージも繋ごうとしています。
弓道場だけは屋根の向きを東西軸に変えて、菱形ではなくて正三角形を利用しています。最初の計画では全部菱形で構成したのですが、弓道のトラスフレームから正三角形が発生して菱形の兄弟として形態のリズムに合わせ、全体の山の構成にリズム・変化をつけています。
北側にあるIPのための出入口で、こういう小さい単位的な部分が飛びはねてしまうと連続性が切れてしまうということがあって、こういうときは大屋根から飛び梁をのばし連続的に接続しています。