アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
イギリスのグラスゴーにセルフリッジというデパートを設計しています。いま最初のマスタープランが終わったところです。マスタープランといっても、あちらでは正確な見積もりが出るような図面が要求されるので、日本での基本設計終了ぐらいの印象があります。構造を再びセシル・バルモンドさんに依頼しています。
地上四階、地下一階の建物です。高さは20数メートルです。折れ曲がった外壁が連続していく間に、一部開口部がスリット状にとられているファサードを考えています。グラスゴーという街はイギリス北方のかつての工業都市ですが、街の印象はくすんだ感じがあります。建設地は街の中心から歩いて東側に数分のところです。セルフリッジのロンドン店はノーマン・フォスターが、バーミンガム店をフューチヤー・システムズが設計していて九月にオープンしました。それに続く三軒目の建物です。
幅約100メートルのデパートで、その後ろ側に住宅が一緒にできます。当初、住宅も含めたマスタープランを依頼されましたが、結局はディベロッバーの要求が多く、地元の建築家に任せつつあります。 計画地は、四層ぐらいの小規模な建物が並んでいる通りにあります。計画に当たっては、垂直のラインを強くしてほしいといわれました。といいますのも、デパートの幅は約100メートルですから、分節をしないとまわりの建物とのスケールのバランスを崩してしまうからです。三方向が通りに面していて、市の中心からつづくいくつかの細い通りが敷地を抜けています。その抜けをグランドレベルだけは保つことが要求されたので、一階部分だけは通り抜けて、その上は建物がつながっている構成になっています。二カ所の中心をもって、そのヴォイドのスペースにはエスカレータがつきます。また五つのコアが周辺部についている構成です。
内装は別のデザイナーが入るので、われわれができるのは全体の構成と外壁、せいぜいコアの部分だけとなります。内部に関しては8〜10メートルぐらいのスパンでグリッドをつくつてくれればいいという注文がありました。そのためまず10メートルのグリッドを引いて、それを崩しながら設計を進めていきました。クライアント側の要請に大幅に背かない程度にグリッドを歪めて、歪んだグリッドの連続をつくり出し、それが各階でずれることによって柱がぜんぶ傾斜しています。このダンシングコラムと呼んでいる曲がった柱ですべての売り場ができあがるように空間の構成を考えています。また、この構成にともなって外壁も折れ曲がっています。
スタディとしては、中心にあった柱が上階にいくとどの方向にずれるのか検証していきます。三×三、すなわち九つのグリッドをつくつて、その中心から上下階では残り八つのグリッド内のどの方向へ傾斜するかをアルゴリズムで決定しようとしています。この方法で、すべて柱がわずかにいろいろな方向に曲がっていくのです。日本のデパートでは絶対許されないでしょうし、セルフリッジでも最初は難色を示していましたが、内部の空間を活性化することになるだろうと採用されました。一階の天井高がだいたい同じである「こどもの城」(東京都渋谷区)で、実際に何本か柱を立てて角度を確認したり、ロンドンのセルフリッジの店内でも柱を建てて実験して、これでいけるのではないかとなりました。
外壁は捻れた柱の形そのままに、出たり引っ込んだりしますが、それを三角形の面で連続させたパネルをつくることにしました。折板面を縦に連ね、折れているところにスムージングをかけて曲面で仕上げます。六種類のパネルを繰り返しながら、あるいはひつくり返して用いながら、無限の変化があるような外壁のパネルをつくろうとしています。開口部は100個ほどつくります。光のための穴と、視線も抜ける窓の両方を組み合わせています。外壁も、白、グレーがかったもの、陶片を象眼したものの三種類のプレキャストパネルを組み合わせてつくろうと考えています。