アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合

東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

マークアップリンク
トップ
私の建築手法
少しずつ建築のプロジェクトを...
LOUIS VUITTON TAIPEI BUILDING
2017
2016
2015
2014
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986

2007 東西アスファルト事業協同組合講演会

少しずつ建築のプロジェクトを進めている様子について

乾 久美子KUMIKO INUI

乾久美子-近影

«前のページへ最初のページへ次のページへ»
LOUIS VUITTON TAIPEI BUILDING
「LOUIS VUITTON TAIPEI BUILDING」全景
「LOUIS VUITTON TAIPEI BUILDING」全景

ルイ・ヴィトンの外装はいくつかありますが、自分なりに一番うまくいっていると思うのは、台北にあるルイ・ヴィトンの外装です。

台湾は沖縄と緯度がだいたい同じくらいで、亜熱帯に属するようなエリアに位置します。ですから敷地周辺はとても亜熱帯的な風景が広がっていました。これは敷地の前にある通りで中山北路と呼ばれています。台北の目抜き通りのひとつです。かなりの密度で街路樹が植えられていて、道路の反対側がほとんど見えません。

「LOUIS VUITTON TAIPEI BUILDING」立面詳細 縮尺1/80「LOUIS VUITTON TAIPEI BUILDING」外壁詳細。
[左]「LOUIS VUITTON TAIPEI BUILDING」立面詳細 縮尺1/80
[右]「LOUIS VUITTON TAIPEI BUILDING」外壁詳細。孔のあいた人工石を使っている。孔は市松模様状にあけられており、孔のサイズを変えることで遠くからは大きな市松模様となって現れる。

また、敷地の隣は植栽の豊かな公園でした。角地にあるこの敷地に建つ建築は、道路側、公園側、そのどちらの外壁面も木で隠れてしまうのです。このプロジェクトは古い建物の構造体だけを利用して、外装と内装を全部やり直すというものでした。私たちが担当したのは外装だけです。

ここでは孔をあけた人工石を使っています。孔は雨の進入を防ぐために樹脂で埋め戻しています。台湾の建築基準法は日本よりも不燃材料に対する規定が緩いのですが、そのおかげで日本では外装に使うことがなかなかできない樹脂を選択することができました。これは孔のパターンを一部取り出した図です。孔は正方形で市松模様状にあけています。また、孔のサイズをさまざまに変えることで、遠くから眺めた時に大きな市松模様が見えるようにしています。

夜景。大きな市松模様が木のシルエットのように見える
夜景。大きな市松模様が木のシルエットのように見える

そしてさらに、その大きな市松模様のサイズもさまざまにすることで、遠くから眺めた時に今度は木のシルエットがぼんやりと浮かび上がるようにしました。市松模様をどんどんスケールアップさせる、すると最初の段階や途中の段階では市松模様でしかなかったものが最終的には木に見える、そのような模様です。

しかしなぜ、木なのか。ルイ・ヴィトンのような世界的に有名なブランド店が、周りの風景を押しのけて目立っているような姿はあまりよいものではありません。強いブランドだからこそ、できるかぎり目立たない方法で新しい店舗を出現させたい、これが私の希望でした。ただし、そんなことをまさかクライアントにいうわけにはいきません。つくるものは、クライアントの立場から見て十分に商業的なきらびやかさをもつものでなくてはいけないからです。目立つものをつくることが、至上命令なわけです。

建物コーナー部を見る
建物コーナー部を見る

ということで、建築を目立たせたくない私と、目立たせたいクライアント、その矛盾を調整するものとして、市松と木のシルエットというまったく関係ないものを組み合わせようとしたのです。市松模様というのはルイ・ヴィトンを象徴するパターンのひとつですから、クライアントは嬉しい。私はその市松模様に木々のシルエットをオーバーラップさせることができて嬉しい。

なぜ私が嬉しいかといえば、それはそうすることで台北の木々が生い茂る風景の中に、あるのかないのかわからなような感じでルイ・ヴィトンを出現させることができるからです。つまり、カモフラージュです。ファサードは、台北の豊かな木々の中に埋もれてしまっています。物理的に埋もれているだけではなくて、木々が落とす影が柔らかな市松模様と調和して意識の中でまぎれてしまうのです。しかしながら、その肌理の違いなど明らかな差に気づく瞬間もあります。隠れているようで、見えているようで、というのはわざわざ見るのではなく、フッと目に入るような感覚です。そうした出現の仕方にすることで残像のように記憶に残る、そのような風景をつくりたいと思いました。

«前のページへ最初のページへ次のページへ»