アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合

東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

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妹島和世+西沢立衛/SANAA - 環境と建築
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環境と建築

妹島和世+西沢立衛/SANAA
KAZUYO SEJIMA + RYUE NISHIZAWA / SANAA


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グレイス・ファームズ

妹島「グレイス・ファームズ(2015年)」は、アメリカ・コネチカット州のニュー・ケイナンの緑地に建つ、宗教団体が運営するコミュニティセンターです。敷地は、アメリカの建築家フィリップ・ジョンソン(1906〜2005年)設計の「グラスハウス(1949年)」の建つ敷地から、車で5〜6分ほどの場所です。「グレイス・ファームズ」は公共的な機能を持つ建物ですが、民間によって建設し運営される建物です。アメリカでは、かつて協会がコミュニティセンターのような役割を果たし、日曜日には午前中にお祈りをして、その後地域の人たち同士が集まりさまざまな活動をしていました。しかし現代社会においては、みんなが教会に行くことはなくなってしまったので、地域コミュニティを維持していくため、かつての教会が果たしていたような活動を行うことのできる施設をつくりたいという要求がありました。設計は、建物をつくるだけでなく、プログラム自体から地域の人たちと協働して積み上げて、徐々につくっていきました。

敷地は、緩やかな起伏のある土地でした。もともと、競走馬の訓練のための場所だったため、パドックや厩が豊かな起伏のランドスケープの中に今も残っています。全体は、礼拝のためのスペースや図書館、体育館、バーベキュー場などいくつかの機能をランドスケープの中に配置し、それらを木造屋根で緩やかに繋いだ「River Building」と呼ばれるメイン棟、厩を改修した切妻屋根の平屋2棟からなる「Barn」と呼ばれる棟のふたつで構成されています。

「グレイス・ファームズ」東側から俯瞰。

「グレイス・ファームズ」東側から俯瞰。

「グレイス・ファームズ」西側から見る。

「グレイス・ファームズ」西側から見る。

「グレイス・ファームズ」軒下空間。

「グレイス・ファームズ」軒下空間。

西沢「River Building」は、基本的に各部屋が分棟形式となっていますが、それぞれを木造屋根で繋げているので、軒下空間を伝っていけば隣の部屋に行けるようになっていて、雨に濡れることなく部屋間を移動することができます。この地域が木造を得意とする場所であったこともあり、木造で屋根をつくりました。真っ直ぐな集成材を敷地の起伏に沿わせ、場所ごとのの風景や水勾配に合わせて傾きを変えて、全体として緩やかにカーブする三次曲面の屋根を架けました。大きなスパンが必要となる体育館やホールでは、むくりの付けた木梁とスチールのテンション材により無柱空間をつくっています。

機能の配列としては、まずランドスケープの中でいちばん高い場所に「サンクチュアリ」と呼ばれる集会場を置き、その一段下のレベルに図書館、次のレベルに地域の食堂、一番下のレベルに体育館を配置しています。一番上のサンクチュアリは、礼拝の他に外部の団体に貸し出すなどさまざまな用途に使われる多目的ホールでもあります。地形に沿って席を配することで、南東の湿地帯へと視線が広がります。食堂棟は、地域の人がいつでも入ることができる場所です。その横にはバーベキュー場があり、それを囲むように建物がUターンし、一番低い場所である体育館へと繋がります。体育館は天井高さが必要なので、一層分地下に掘り下げ、全体の高さを抑えています。

「グレイス・ファームズ」半地下のコート。

「グレイス・ファームズ」半地下のコート。

「グレイス・ファームズ」サンクチュアリ。

「グレイス・ファームズ」サンクチュアリ。

「グレイス・ファームズ」平面

「グレイス・ファームズ」平面。

妹島建物というより、パドックのフェンスのようにも見えるものが、地形に沿って、カーブしながら徐々に下がっていきます。建物と自然というふたつに分けられるというよりは、建物もランドスケープをつくる一要素としてあるという感じなればと思っています。

「グレイス・ファームズ」コモンズから見る。

「グレイス・ファームズ」コモンズから見る。


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