アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
妹島これまでとは別の試みとして、分節していたものをひとつに繋げていったふたつの事例をご紹介します。
「なかまちテラス 小平市立仲町公民館・仲町図書館」北東から見る。
ひとつ目は、「なかまちテラス 小平市立仲町公民館・仲町図書館(2015年)」です。小平市中町の、公民館と図書館を一体化した生涯学習施設です。もともとこの敷地には3階建ての鉄骨鉄筋コンクリート造の図書館があり、そこから徒歩1〜2分のところに小さな公民館がありました。市がそれらを複合させようと計画したものです。
敷地は青梅街道という割と交通量が多い道路に面していますが、周囲には緑道や水路、田んぼといった昔の面影が残っており、四方に広がりを持つエリアです。ですから、いろいろな人が四方からバラバラとこの建物に集まってくることが想像して、その風景や使い方にふさわしい建ち方がよいと考えました。また、もともと異なるふたつの建物には、時間と共に必要に応じてつくり出されたいろいろな場所がありました。そのいろいろな場所を、この建築にもできるだけ多く新しい形でつくりたいと思いました。そこで、1階部分で分棟形式となって建ち上がった建物が、さまざまな場所で繋がり、だんだんとひとつの塊になっていく建物を考えました。1階部分は分棟で、おのおの入り口があって、あちこちから歩いてきた人びとが通り抜けていくこともできるし、また、いろいろなところから建物に入ることもできます。
「なかまちテラス 小平市立仲町公民館・仲町図書館」1 階カフェラウンジを見る。
「なかまちテラス 小平市立仲町公民館・仲町図書館」2 階からカフェラウンジを見下ろす。
「なかまちテラス 小平市立仲町公民館・仲町図書館」平面
「なかまちテラス 小平市立仲町公民館・仲町図書館」1 階カフェラウンジ。
これまでは、天井高さを揃えて屋根を平らにすることが多かったのですが、ここでは平らにしてしまうと建物の全体性が強まってしまい、このような複合的な形と機能には合っていないと思ったので、場所に応じて天井高さを変え、それぞれの小さな場所が違った空間になるように考えました。外装は、アルミのエキスパンドメタルです。柔らかく光を反射し、また日射遮蔽の効果も持ちます。
建物と外部との関係性をいつも考えているのですが、ここでは周辺の建物群はあるランダムさを持って配置されていました。近くに幼稚園があったり、おばあさんがひとりで暮らしている家が建っていたりカフェがあったりして、いろいろな方向から人が歩いてくるといった、周辺の雰囲気に具体的に反応ができるような建物がよいと考えました。街のコンテクストの違いを反応していくことで、より外と繋がっていると言えるのではないか。そこでボリュームがいろいろな方向に正面を持ち、それぞれに対して開かれていて、また、中と外との関係が立体的に繋がるような形状としました。