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東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

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石井 和紘-私の建築辞書
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石井 和紘KAZUHIRO ISHII


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中庭から山型へ
JAZZYなバロック
JAZZYなバロック

次は中庭です。ちょっと徹底したものすごい中庭の例としては、全体の中にスポッと中庭があって、それを中心にして小さな村ができ上がっているというものがあります。まあ、普通はこういう具合にはいかないので、それに比べれば僕のやった中庭なんておとなしいもんです。中野に建てた住宅で、土地が54坪のところに延べ面積54坪という、いわゆるコートハウスで、この中にいると、外界のごたごたした世界を感じなくてすむというわけです。「JAZZYなバロック」というタイトルの家です。中庭には薄く水を張るようになっています。小さな住宅ですが大きく見せるために、窓が四つついていたり、唐突で落っこちそうなので絆創膏で止めてあったりします。そして、擬似楕円ですから中心が二つあるわけで、それぞれの部屋にその中心があります。

数奇屋とジャズは似ておりまして、コード進行があって、そのコードから少しはずしたところでアドリブをするわけです。これは両方とも、ちょっとアンチの姿勢といえます。これは、宇宙の構造に近いものじゃないかと思います。

次に山型です。景観全体が山型になっているイメージということが、建築にはかなり原イメージ的にあります。こういうイメージで大変おもしろかったのが、映画「未知との遭遇」の中で巨大な母船が現れたときです。UF0の上に山型になって都市が載っているわけです。

直島小学校
直島小学校

ぼくの作品としては、小学校を山の形につくったという例で、「直島小学校」があります。中庭があります。近くへ寄っていくと、建物のひとつひとつは大きいんですが、全体の山に比べると遠くからは小さくまとまって見える。小学生が六年間ここに通学している間に、山は大きかったんだ、山の存在は大きかったんだ、ということを感じてくれるといいなと思いながら設計したものです。

こういう火山型の山の形というのは、宇宙にいっぱいある。この意味で、富士山とか阿蘇とかは宇宙と対応している形です。褶曲山脈はその後にできているわけです。工場を山型でやった例があります。熊本にある「富士ダイス熊本工場」です。中庭があります。熊本の県のマークというのがあって、その形と阿蘇山の形で全体をつくっています。

工場というものは、基本的には箱型ですから、中庭を囲んで皆んなの作業がつながるように考えています。真ん中に火山が噴火しているような彫刻を置いています。工場としては、かなり無理を通したというか、相当おもしろい建物になったと思います。

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