アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
大きい建築は分節化することが大切です。分節化の方法ちしては連歌があります。芭蕉発句を詠い、そのあと順番に弟子が詠っていく。芭蕉のポリシー、思想、美学が発句となる。大きな開発とは、いろんな設計事務所がやるわけですが、そのときにだれか一人、優れた人が発句を詠い、その発句に沿ってそれぞれ担当した設計事務所が一つの思想でまとめていく街づくりが面白いのです。ポリシーを立てる最初の発句が大事です。
大阪市平野区は、昔「平野郷」と呼ばれる集落があったところです。その平野の古い民家イメージを区民ホールに表現しようと試みました。
平面的には各部屋を機能的に文節化しています。例えば住宅街など、小さいものがたくさんあるところに大きいものを建てなければならないとき、細かく切って周辺の住宅にできるだけ威圧感を与えないよう進めます。大きなものをできるだけ細分化することで、周りの民家と合わせることができます。細分化していくことで、優しさが生み出せると重います。
コンペティションで獲得した作品です。絵になる町をつくろうということで、実際に絵を描いてみました。そして将来このようになるだろうという一つの想像の中で、絵になるようにとデザインを進めました。
このしだれ桜は移植して間もないのでまだ幹がヤボな感じですが、将来は枝が地面までたれ下がり、桜が咲くと幹が見えなくなり、枝と花だけになると思っています。
古い町並みに対して、延焼の恐れのある部分は、軒裏も法律上モルタルを塗らなければいけません。しかし、塗るとヤボになります。そこで、二元対比の考え方により、壁と屋根の間合いを考え、軒裏は耐光性鋼板の鉄板でつくって、垂木も母屋も全部鉄アングルでやっています。茶黒なので、訪れる人は木だと思っています。塀も鋼板を使っていますが、木だと思っているようです。
ミステリアスな空間をつくろうと路地もつくってあります。路地は、最近見られなくなりましたが、なかなかいいものです。路地も広場も古瓦で敷きつめられています。これはすべて割れた瓦を使っているので、材料はタダです。捨ててしまうものである古瓦が、このように情緒的で美しい材料なのです。
誰哉行燈を巨大にしたものをエントランスホールにシンボリックの設けました。中はインフォメーションセンターになっています。
阪神大震災を見ると、瓦屋根はどうも棟が弱かったようです。そこで、棟をH型鋼でつくり、その溝に瓦がはめ込んであります。
アプローチのところですが、左は古い民家で、右が常設展示室の建物です。民家と同じ板を張らないほうが面白いと考え、板張りに対して漆喰で対比させています。
すべて瓦と漆喰というようにローテックにしていまわず、建物は要所要所にハイテックな素材を使って現代的な表現となるよう考えました。修景には古い民家に対してはできるだけなごむデザインを考え、民家と関係のない敷地中央あたりには、シャープで現代的なデザインの建築をつくり、新鮮さを失わないよう配慮してあります。私はこの手法を「サンドイッチ法」と呼んでいます。
オープンの翌日、子供たちがさっそくやってきて、夏休みの宿題に「かわらミュージアム」の絵を描いていました。それを見たとき、私はたいへんうれしかったことを今も覚えています。多くの人がスケッチブックを抱えて訪れてくる日を楽しみにしています。