アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
「リベラル・アーツ&サイエンス・カレッジ」の屋根を俯瞰した写真です。フランスで活動している建築家が、エール・フランスの機内誌で見つけて送ってくれました。カタールを空から見るという特集のために撮られたもので、自分でもこのアングルの写真を見るのは初めてで新鮮でした。写真には、細かい不思議なパターンのトップライトとダブルルーフのためのアルミのルーバー、そしてウインドタワーなどが写っています。ウインドタワーは風を出し入れするためのもので、半地下の駐車場の換気と排煙に用いています。強い陽射しを直接壁に当てないようダブルウォールにしています。ペルシャ湾岸は気候的にとても厳しい場所で、暑いのはもちろん、湿度も高いのです。そういった条件にはダブルウォールとダブルルーフで対処すると共に、トップライトの下にはリフレクターを設置し、光を直接入れず、天井に跳ね返してから入れるという重装備の建築にしています。写真を見ると今までの建築の表情とはだいぶ違うように思います。海外で仕事をしていると、防水の仕方や屋根のつくり方なども、日本での仕事とはまったく違うところから取り組んでいかないといけません。
インテリアを単純化して「黒」と「白」に塗り分けています。二階はオープンリソースエリアです。「黒」と「白」についてはこれまでにもお話ししていますが、「黒」は機能と空間とが一対一で対応している空間で、「白」は使われ方によってその場所の呼び方が変わるような空間を表しています。建築のプランを「黒」と「白」に読み換えていくことは、空間を微分していく作業だと想います。
「リベラル・アーツ&サイエンス・カレッジ」は、磯崎新さんのマスタープランによるカタール・ドーハのエデュケーション・シティ(教育都市)に建っています。130メートル×110メートル、二階建ての建物で、僕らが設計して実現した建物の中で最大規模のものです。規模が大きくなると当然建築の中にいろいろな場面が出てきますが、それが単純になり過ぎないようにしました。でも、ただ複雑にすればよいのではなく、どのように整理してつくればよい建築になるかということも十分に考えています。
僕らはなぜか学校を設計する仕事が多いのです。図は、これまで設計した学校建築(工事中の「千葉市立打瀬第三小学校」や設計中の大阪、箕面の学校を含めた)をセームスケールで並べたものです。いちばん大きいのはドーハで36,000平方メートルぐらいです。
テーマにした「集積回路型」は、『新建築』で美浜打瀬小学校のプロジェクトを掲載した際の西沢大良さんとの対談で彼が言ってくれた言葉です。僕らは学校に限らずよい建築というのは、結局はそこにいる人、学校の場合は子どもたちの表情で分かるものだと考えています。みんなが生き生きしているとその建物を見た時の印象もよいものです。逆に建物だけ見てよいと思えても、子どもたちが元気でない学校を見ると、よい印象にはなりません。住宅を見る時も同じで、建物や空間や光がよいなと思っても、住んでいる人が建築に圧倒されているように見えるとつらい感じがします。住宅は個人の施主とのコミュニケーションでできるわけですが、公共の大きな建物の場合には設計者側が想象力を働かせないと目の前にいる人との打合わせがうまくいっても使われ始めた建物が生き生きしているとは限りません。言葉にすると当たり前なのですが、建物を通してそれをどうやって実現させるかはなかなか簡単なことではありません。
ご覧になって明らかなように多くの建築家が好きな状態、何もないミニマムな光だけが見えているような空間とはぜんぜん違います。でも僕はそれが元気に使われているように見えればよいなと思っています。使っている人たちがそこに対して愛を持っているかどうかは見れば分かります。
僕らが設計した学校の今の様子を見にいくと、たとえば「迫桜高校」では少人数のゼミの際、吹き抜け空間のテーブルで授業をしたり、「吉備高原小学校」では外の教室でもさかんに授業をしていたりします。僕らが蒔いた種をうまく育ててくれているようで嬉しく思いますね。