アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
スペースブロックは空間のキューブを3個とか4個繋げていくゲームのようなもので、重要なルールはいったんつくったスペースブロックの中を仕切ってはいけないということです。中を仕切ったら普通のプランになってしまいますから、面白くも何ともありません。最近だと分譲マンションの2LDKや3LDKを立体的にデザインしている建築家もいますが、それとは違います。何が違うかというと、空間に独特の形があるということを最後まで維持しようとしていることです。
はじめてスペースブロックの手法を用いたのは、22個の積み木で構成された「スペースブロック上新圧」です。内法で2.2メートル角のモデュールの狭い空間です。いちばん狭い部屋は20平方メートルを切っているぐらいで、大きな部屋でも27平方メートルです。この狭さ感は実際に行かないと分からないと思いますが、嫌な感じにはなっていないと思います。それが横にT字になっていたりとか、上向きに伸びていて横にいったりとか、一直線で横が大きい窓になっているとか、縦向きにT字になっていたりとか、同じモデュールの同じようなものの組み合わせ方が違うだけで、光や風の入り方がぜんぜん違うようになります。でもシリーズでやるつもりはなくて、毎回違うテーマを開発するつもりでやっています。
僕のつくった建築では空間の中で人が動き回ってくれた方がよいという考え方が前提としてあります。もちろんずっと動いているということはあり得ませんが、散らばって動いている状態がよいと思っています。目的的に歩くだけだと面白くはなりません。目的的に歩くというのは、目的のある「黒」の空間に向かって、つまり次の授業とか会議に向かう動きです。公園を散歩するとか街をぶらぶらするということはあっても、建築の中で、あまりそういうことは起こりません。
「迫桜高校」や「リベラル・アーツ&サイエンス・カレッジ」にFLAという空間があるのは、学校の中にもさまよい歩く空間をつくりたいと思ったからです。
原広司さんの著書に、ダイアモンド・トラバーシングという記号が出てきます。単純な四角を描いたスクエア・トラバーシングを45度倒したのがダイアモンド・トラバーシングです。スクエア・トラバーシングはA点からB点へ○○せねばならないという動き方をして、ダイアモンド・トラバーシングは○○かもしれないという動きをします。僕は「集積回路」を組んでいく時に、平面であれ立体であれ、ダイアモンド・トラバーシングがたくさん起こるように空間をつくりたいと思っています。空間の中に曲がって見えない先があると、人は行きたくなるのではないでしょうか。どん詰まりに四角い壁がある時にはわざわざ向こうまで行かなくても分かりますが、ここではかなりの部屋は行かないと分からない部分があります。それはもともとの積み木が直方体でなく、凸があったり折れ曲がりがあったりするからです。そういう特徴があるので、中を仕切りたくないのです。ほかの住戸プランでもジグザグにして、奥が見えそうで見えない加減を気にしてデザインしています。死角が空間の中にあることが、人を誘うのではないかと思います。
妹島和世さんと西沢立衛さんがスイスのローザンヌに一辺200メートルの巨大なステューデントセンターを設計されています。二枚の床がうねるような形態の巨大なワンルームですが、人をどう動かすかという点においては僕の考え方と似ていると思います。彼らのものはシームレスだし微分的というより連続的・積分的ですが、やはり床がうねっているから見えそうで見えないところがたくさんあって、それが人を動かすのだと思います。「ビッグ・ハート出雲」では、床をマウンドのように1.2メートル上げて地面のレベルで見通せなくして、人が向こう側に行きたくなるようにしました。