アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
The world is the totality of facts, not things.
世界は事実の寄せ集めであって、モノの寄せ集めではない。
建築は「モノ」ではなく「出来事」である。
ルードヴィッヒ・ヴィトゲンシュタイン『論理哲学論考』より
僕は東京大学で六年間、原広司さんの研究室に所属していました。昨年ギャラリー間での原さんの展覧会に併せて出版された『DISCRETE CITY』に引用されていた言葉です。日本語訳のほうは原さんによる意訳です。
対談で原さんに「君がやっていることは要するにヴィトゲンシュタインが書いていることだよ」と言われました。原さんのお考えの引用と思ってもらった方がよいのですが、建築というのは普通、柱や床や壁や屋根などの「モノ」でできるし、図面に描くのも「モノ」、写真に写るのも「モノ」ですから、どうしても「モノ」をつくるのが好きな人が建築家になるし、建築の話というのは「モノ」の話になりがちです。でも、僕にとって建築は、出来事=アクティビティです。
写真家の杉本博司さんは、自分の展覧会の会場構成を自分で図面を描いて模型もつくって考えていらっしゃる。さらに、会場を撮影し、その写真も作品集に載せています。それは、人がいないミニマムで真っ白な空間です。しかし、それがかっこいいのは、決して「モノ」ではないからです。
出来事=「事象」あるいは「状態」
建築とはモノを通して「出来事」を生み出すデバイス(装置)である。
出来事は物理学的に言うと現象とか状態です。コンクリートや木や鉄、ガラスを使ってつくられている建築は、それらを通して出来事や空間の状態を生み出すデバイスであると単純に考えようとしています。そうするとデバイスの方を目的にしても仕方がなくて、デバイスを使って何を実現するのかということが問題になります。それを具体的に四つのエピソードで説明します。