アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
本日は「3.11以降の建築」というテーマでお話いたしますが、私が皆さんに問いかけたいこと、また、これは私自身にも問いかけていることなのですが、それについてまず申し上げたいと思います。先ほど、ある種の精神分裂状態だと言いましたけど、「人として生きる」ということと、「建築家として生きる」ということが、乖離してる感覚を私はずっと持っています。たとえば、被災地に向かう、あるいは、被災した方とお話をさせていただくという時には、建築家として向き合うのではなくて、ひとりの人間として、どうやってお手伝いができるのかということ、また、そこでは人間が生きたり死んだりするのだ、ということが頭のほとんどを占めています。それがもう99%ですね。建築を捨て、あるいは、建築家を捨て、人と向き合うということになるわけです。しかし、本当にそれでよいのだろうか、建築、あるいは建築家として向き合う方法がないだろうか、とも思うのです。
私も長い間、作家としての建築家として、より美しく、あるいはより快適に、ひょっとしたら学生諸君の設計課題のように、人を勇気付けるようなちょっと面白いかたちを考える、そのようにして生きてきたので、これからもそういうことを考えたいんだけど、復興に関しては全然違うところで向き合わなきゃいけない。そうなると、これまでの自分たちのやり方が間違ってたんじゃないか、という思いが湧いてきます。本日お越しいただいた皆さんの中にもたくさんいらっしゃると思いますけど、多分、被災地に向かわれた建築家は皆さん、同じような思いだったんじゃないかと思います。建築家として被災地に行くんだけど、そこで求められているのは、人としてどうなんだということがほとんどを占めていて、こちらの想いと現場での状況が上手く結び付かないというようなことがあるのではないでしょうか。これが本日のいちばんのテーマであります。