アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
頭を整理するためにいろいろ図を描くのが私のくせなのですが、半年か一年くらい前に、被災地で今起こっているさまざまな問題を整理するために、ひとつの図を描きました。
被災地の問題と言えば、ひとつには人口の問題がありますよね。世界はどこも人口爆発していますが、被災地はどこも人口減少で非常に苦しんでいます。そうすると、当然そこには、第一次産業の問題、年金・医療の問題、少子高齢化の問題も付随してきます。
それから一方で、技術の問題があります。インターネット、スマートフォンなどを含めて、私たちは情報革命の最中を生きているわけですが、どんどん情報が世の中を変えていっている。それは都会であれ、田舎であれ同じです。バイオテクノロジーやナノテクノロジー、それからさまざまなエネルギーのスマート化といったものがすべて、技術の問題として考えられます。もう少し考えを広げると、原発も技術と言えますよね。情報革命と被災地が関係ないかというと実はそうではなくて、たとえば、私がよく通っている岩手県の野田村では、お年寄りがICT(情報通信技術)で繋がる取り組みを、東日本大震災以前からずっとやってきていて、それが非常に復興の役に立ったと村長さんも言っています。それから、例えば福島県の双葉町では、原発事故で警戒区域になって住民の方は別の場所でバラバラに居住していますから、コミュニティそのものが崩壊することが、街としてはいちばん怖いことです。そこで、コミュニティを保つ助けとして、住民にスマートフォンを配るという話もあると聞いています。ですから、復興と情報というのは一見無関係なようですけど、実は非常に深く繋がっていると思うのです。
それから、当然自然という問題があって、そこには地震・津波・台風などが挙げられます。昔はここに火事、親父っていうのが入ったんですけど(笑)。最近は崖崩れなども当てはまりますね。
今挙げたようなさまざまな問題が全部ぐしゃぐしゃになって襲いかかってきているので、物事の整理がつきにくいんだろうと思います。
日本の人口は、2005年を境に下降に入りました。2005年の日本の人口は1億3,000万人なのですが、そこに至ったのは、経済や技術が、人口増加を許したからです。しかし、これは言ってみると坂の上の雲で、現実には、100年後には今の半分くらいの人口になると予想されています。その減少した分を埋め合わせるのが、「文化」なのではないかと私は考えています。
ただ、私がこのように抽象的に考えていた話は、被災地に行くとものすごくリアルに襲いかかってきます。岩手県の大槌町は人口が1万2〜3千人くらいの街です。地震発生当時、町長さんを含め、町役場の幹部の方は皆さん会議中で、そこを津波に襲われたものですから、町役場ごと流され、町の幹部のほとんどがいなくなってしまいました。そのため、大槌町では復興に大変手こずっていて、私は去年、この街の復興戦略会議に参加しました。この会議には、都市計画の大方潤一郎先生も関わられていて、大方先生の英断で、大槌町の人口動態を発表するということを試みました。これはおそらく、今回被災した自治体では初めてのことだったと思います。地元紙ですが、新聞でも大きく取り上げられました。私はその人口動態を見て愕然としました。
2013年に1万2千人くらいだった人口が、2020年を境にして、今からおよそ30年後の2040年頃には6〜7割くらいにまで減少してしまうと予想されています。これは自然減のみの予想です。三陸縦貫自動車道が大槌町に接続されるのが2020年なのですが、それによって、うっかりするとさらに多くの人が外へ出て行ってしまいますが、この影響予測はこれには入っていません。これを、ストロー効果[注1]と言いますが、若い世代が街に希望を抱けない限り、私たちが想定している人口動向よりもっとひどいことになるかもしれない。だって、希望もなくて未来が描けないところに、若い人は住んだりしませんよね。いくら郷土を愛していても無理です。だから、希望を見出さなきゃいけないわけですが、そんなことが誰にできるのかということになります。想像し、想い描き、それを具体的なイメージとして提示すること、それは、都市計画家やプランナー、そして建築家の役割だと思うのです。復興は遅れています。こんな状態でこのままいったら大変なことになる、ということを、この戦略会議では議論しました。
[注1] 新しい交通網の開通により、都市が発展したり衰退したりすること。交通の起点・終点となる地域へと経済活動などが集中し、中継地点である地域が衰退することが問題となっている。