アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
私の研究室にいたある学生は、志願をして陸前高田市の職員になり、復興にあたっています。ある時、彼から送られてきた造成が進む陸前高田市の写真に、私は愕然としました。私も実際に見に行きましたが、なんて絶望的な風景なのだろうかと思いました。私たちがそこで見たのは、今泉地区のだいたい標高120メートルくらいの山をヘッドカットで80メートル切り飛ばして、その土を巨大なベルトコンベアで市街地まで運び、8メートルの盛土の市街地をつくる、という復興計画のあり様でした。
私たち建築家なら分かると思いますが、8メートルの盛土という敷地でいったい何が起こるのかと言うと、その上に建てる建物には杭が必要になり、それから、不等沈下もするだろうということです。社会資本の見えない無駄がつくられているのです。こんな復興計画は違うんじゃないか、馬鹿なことは止めろ、と何度も言ったのですが、止まりませんでした。それから、何より心が痛むのは、このふるさとの山がまったく姿を変えるということですね。山を切り飛ばしてできた土は、トラックで運ぶととんでもなくお金がかかるので、ベルトコンベアがつくられました。気仙川を渡すために、橋を架けなければいけないので、まるで本州四国連絡橋のようなものすごい櫓を組んで、それにベルトコンベアをかけて、市街地にこの土を移してくるのです。誰もが唖然とする風景です。最初に見た時は、読売ランドのジェットコースターがここに引っ越してきたんじゃないかって思ったくらいです(笑)。この橋はすべて仮設で、建設に100億くらいかかってるという話です。悲しいというか、こんなことしかできないのかという慚愧の念に堪えない、つらい風景ですね。この悲しい風景を、建築家として、人として、どう考えるのか。ここでは、建築家としても、人としても、どちらも否定されている気がします。