アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合

東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

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妹島和世+西沢立衛/SANAA - 環境と建築
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環境と建築

妹島和世+西沢立衛/SANAA
KAZUYO SEJIMA + RYUE NISHIZAWA / SANAA


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グレイス・ファームズ
「グレイス・ファームズ」東側より上空から見る

東側より上空から見る

西沢アメリカ・コネチカット州のニュー・ケイナンという小さな街に建つ「グレイス・ファームズ(2015年)」です。公共的な機能を持つ建物ですが、民間によって建設され運営されています。アメリカではかつて、教会は礼拝だけではなく、コミュニティセンターのような役割も果たしていました。人びとが集まり、顔を合わせるご近所付き合いの場として利用されていました。しかし現代社会においては、教会を訪れる人が減り、個人主義化が進み、コミュニティが失われつつあります。そこで、地域コミュニティを維持する拠点として、多目的に使えるサンクチュアリが中心となり、コート、コモンズ、ライブラリ等の地域活動を支援する機能を付随させることで、自然と人が集まり関係が結ばれていく、かつての教会の現代版のような建物をつくろうという計画です。

妹島元もと競走馬の訓練のための場所だったので、敷地にはパドックや厩が残されていました。その厩を改修した切妻屋根の平屋二棟からなる「Barn」と呼ばれる棟には、アートスタジオやオフィスを配置しています。メイン棟である「River Building」の各部屋は基本的には分棟形式ですが、それらを繋げるようにひとつの大きな木造屋根を架けています。木造屋根は豊かな地形に合わせ、木々を避けながら緩やかにカーブを描き、開放感のある軒下空間が広がっています。

この屋根は設計当初はスチールで検討していました。しかし屋根が地形に沿って下がっていく形状で、それは自由な三次曲面になり、そうすると梁ひとつひとつが異なる断面になり、ジョイント部が複雑なものになってしまう問題がありました。また、この地域に木造建築の文化が根付いていたこともあって、木造を選択しました。室内から外へ梁が飛び出す構成の建物なので、ヒートブリッジを防ぐというメリットも木造にはありました。真っ直ぐな集成材を敷地の起伏に沿わせ、場所ごとの眺望や排水勾配に合わせて傾きを変えて、緩やかに繋がる三次曲面を持つ木造屋根を実現しています。

「グレイス・ファームズ」東側俯瞰

東側俯瞰

「グレイス・ファームズ」西側から見る

西側から見る

「グレイス・ファームズ」サンクチュアリ

サンクチュアリ

「グレイス・ファームズ」コモンズより見る

コモンズより見る

西沢機能の配置としては、まずランドスケープの中でいちばん高い場所にサンクチュアリと呼ばれる多目的ホールを置き、その一段下のレベルにライブラリ、さらに下のレベルに地域の食堂、いちばん下のレベルにコートを配置しています。いちばん上のサンクチュアリの客席は、周辺のランドスケープに沿うように緩く傾斜しており、なんとなく原っぱに座っているような感覚になります。食堂は、地域の人がいつでも利用できる場所で、日曜日の朝にはお茶をしに多くの人が集まります。その横にはバーベキュー広場があり、それを囲むように建物がUターンし、体育館へと繋がります。

妹島どのレベルにいても屋根に邪魔されず視線が抜けていくようになっていて、上から下まで歩いていくとさまざまな風景を眺めることができます。各部屋にはカーテンも備えられていますが、ほとんど開けっ放しで、来訪者は豊かな自然を楽しみながらそれぞれの時間を過ごしているようです。建物としてはひと繋がりですが、場所によってはばらばらとして、建物と自然がふたつに分けられているというよりは、建物が風景をつくる一要素になる建物になればと思っています。

「グレイス・ファームズ」平面

平面

「グレイス・ファームズ」コモンズ横の庇下空間よりバーベキュー広場を見る

コモンズ横の庇下空間よりバーベキュー広場を見る

「グレイス・ファームズ」コート内観

コート内観


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