アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
これはまだ工事中の建物です。多摩美術大学が新しいキャンパスをつくっていて、2007年の春に完成する予定ですが、そのシンボル的存在になる新しい図書館の設計を依頼されました。地下一階、地上二階建ての図書館です。ここで、私は今までにあまり使ったことのないアーチを用いた計画をしました。模型写真で見るとシンボリックでクラシックに見えますが、アーチであってアーチでないものをつくるということがテーマのひとつでした。通常、アーチというものは厚みのあるものです。でも、その通りにつくってしまうと古典的な建物をイメージしてしまうので、この建物では、いかにアーチを薄くつくるかということが課題になったのです。すべてスパンの違うアーチがさまざまな角度で交差して二層の空間をつくる計画になりました。
この建物も構造に関して佐々木睦朗さんとコラボレーションしています。アーチを薄くするために、佐々木さんから提案されたのは「MIKIMOTO Ginza 2」で使った銅板コンクリートとは逆に、芯にスチールのプレートを入れて、その両面にコンクリートを打つという方法でした。特に足元回りを小さい断面で床面に設置したいということで200ミリの厚さの壁を連続させています。スチールを組み上げて、配筋をして、型枠を付けて、コンクリートを打つという施工は、難しい工事でしたが、2006年2月28日現在、躯体ができ上がって、2007年春の竣工になんとか間に合いそうです。
このキャンパスは敷地に勾配があることが特徴なのですが、一階の床には敷地の傾斜が、そのまま続いて入ってくる計画にして、そのスロープをコンクリートの土間のまま仕上げようと思っています。床が斜めで、しかも直角でない角度でアーチが交差していくので、施工屋さん泣かせの建物です。内部空間に入ると不思議ですが、自分の体がどういう方向を向いていて、どこが垂直なのか分からなくなるような錯覚に囚われます。
新しい図書館は正門からの学生の通り道に位置しているので、一階には勾配のついたフリースペースを設けて、学生が誰でも通り抜けられるようにしました。そのフリースペースはギャラリーやコーヒーショップ、あるいは小さなレクチヤーができるようなスペースになっています。そこが単なる通り抜けの通路ではなくて、人が留まるような空間にしようとしているのです。正門があって、学生用のバス停があって、そして緑のきれいな広場があって、そこから、ずっと続いている傾斜で敷地と床が繋がっているということは、水平の床と違った面白さがあります。そこに、どうやって、うまく家具等を配置するかを考えているところです。多摩美術大学の客員教授をされている藤江和子さんに家具のデザインをお願いしています。