アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
マンハッタンでやっているプロジェクトが三つありまして、ひとつは国連の新しいタワー「新国連ビル」です。しかしこれは今、残念ながら政治的な理由により止まっています。ふたつめは「ASTOR PLACE」という、オフィスと教育施設のコンプレックスで、「クーパー・ユニオン」のすぐ北側の敷地にできます。「ASTOR PLACE」が一番先にできる可能性が高く2011年、そして三つめの「ワールド・トレード・センター タワー4」は2012年竣工予定となっています。今日はこの「WTC タワー4」の話を少しします。
これは2006年の9月に、計画案を初めてパブリックに公表した時の写真です。「螺旋状のものにしたい」というダニエル・リベスキンドのマスタープランを基に、ノーマン・フォスターの「WTC タワー2」とリチャード・ロジャースの「WTC タワー3」、それからわれわれの「WTC タワー4」と、「フリーダム・タワー」がSOMのデイヴィッド・チャイルズによってつくられていて、これらは地下ですべて繋がる予定です。そして前にはピーター・ウォーカーが中心になってランドスケープをやっている「メモリアル・パーク」があります。ちなみに彼は「ノバルティスキャンパス」のランドスケープもやっています。
ノーマン・フォスター、リチャード・ロジャースと私の事務所は予定地のすぐ後ろの「7WTC」に設置され、ここの一室で皆一緒に一年以上作業したのですが、面白いと思ったのは、リチャード・ロジャースのオフィスは徹底的にCGを用いることで、模型をつくりません。一度われわれがプレゼンテーションのために彼らの分もつくって持っていったらリチャード・ロジャースの事務所の人びとはその模型を見て、自分たちの建物はこうなのかと初めて模型を見たというくらい、彼らはCGしか使わない事務所です。逆にノーマン・フォスターの事務所はまだ結構模型をつくります。われわれはここでもさまざまなスケールの模型をつくりました。
しかしラリー ・シルヴァー スティンというここの権利者かつディベロッパーは、元もとこれらの建物のうち、ふたつをインベスティメント・バンク(投資銀行)が入居する想定で計画を進めていて、すべて2012年までにつくられる予定でした。しかしご承知のように今回の金融危機によって、リーマン・ブラザーズやメリル・リンチといったインベスティメント・バンクはなくなってしまったので、それらの施設が入るということはほぼなくなりました。ところがインベスティメント・バンクには共通して、トレードフロアという、他の施設にはない24時間使用を前提とした特殊な空間がつくられます。それを入れ込んだままの設計では普通のオフィスビルにはならないので、今後どういうかたちのオフィスになっていくかは分かりません。われわれの「WTC タワー4」は、幸い政府機関が入る予定の建物なので、特に変更もなく現在順調に進んでいて、おそらくこの建物が一番最初にできると思います。その次に「フリーダム・タワー」ができて、残りはこうした事情で少し遅れるでしょう。グローバリゼーションはこういうところでも、いろいろな意味で影を落としています。