アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合

東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

マークアップリンク
トップ
私の建築手法
槇 文彦 - 近作を語る
ワールド・トレード・センター タワー4 [1]
2022
2021
2019
2018
2017
2016
2015
2014
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986

2008 東西アスファルト事業協同組合講演会

近作を語る - 建築のグローバリゼーションの中で考えること

槇 文彦FUMIHIKO MAKI


«前のページへ最初のページへ次のページへ»
ワールド・トレード・センター タワー4 [1]
「WTC」スケッチ
「WTC」スケッチ

マンハッタンでやっているプロジェクトが三つありまして、ひとつは国連の新しいタワー「新国連ビル」です。しかしこれは今、残念ながら政治的な理由により止まっています。ふたつめは「ASTOR PLACE」という、オフィスと教育施設のコンプレックスで、「クーパー・ユニオン」のすぐ北側の敷地にできます。「ASTOR PLACE」が一番先にできる可能性が高く2011年、そして三つめの「ワールド・トレード・センター タワー4」は2012年竣工予定となっています。今日はこの「WTC タワー4」の話を少しします。

「WTC タワー4」模型
「WTC タワー4」模型

これは2006年の9月に、計画案を初めてパブリックに公表した時の写真です。「螺旋状のものにしたい」というダニエル・リベスキンドのマスタープランを基に、ノーマン・フォスターの「WTC タワー2」とリチャード・ロジャースの「WTC タワー3」、それからわれわれの「WTC タワー4」と、「フリーダム・タワー」がSOMのデイヴィッド・チャイルズによってつくられていて、これらは地下ですべて繋がる予定です。そして前にはピーター・ウォーカーが中心になってランドスケープをやっている「メモリアル・パーク」があります。ちなみに彼は「ノバルティスキャンパス」のランドスケープもやっています。

「WTC」計画案公表時の写真。左端が槇氏
「WTC」計画案公表時の写真。左端が槇氏

ノーマン・フォスター、リチャード・ロジャースと私の事務所は予定地のすぐ後ろの「7WTC」に設置され、ここの一室で皆一緒に一年以上作業したのですが、面白いと思ったのは、リチャード・ロジャースのオフィスは徹底的にCGを用いることで、模型をつくりません。一度われわれがプレゼンテーションのために彼らの分もつくって持っていったらリチャード・ロジャースの事務所の人びとはその模型を見て、自分たちの建物はこうなのかと初めて模型を見たというくらい、彼らはCGしか使わない事務所です。逆にノーマン・フォスターの事務所はまだ結構模型をつくります。われわれはここでもさまざまなスケールの模型をつくりました。

「WTC」の完成予想CG
「WTC」の完成予想CG
メモリアル・パークを中心に左から時計回りに「フリーダム・タワー」「タワー2」「タワー3」「タワー4」
メモリアル・パークを中心に左から時計回りに「フリーダム・タワー」「タワー2」「タワー3」「タワー4」

しかしラリー ・シルヴァー スティンというここの権利者かつディベロッパーは、元もとこれらの建物のうち、ふたつをインベスティメント・バンク(投資銀行)が入居する想定で計画を進めていて、すべて2012年までにつくられる予定でした。しかしご承知のように今回の金融危機によって、リーマン・ブラザーズやメリル・リンチといったインベスティメント・バンクはなくなってしまったので、それらの施設が入るということはほぼなくなりました。ところがインベスティメント・バンクには共通して、トレードフロアという、他の施設にはない24時間使用を前提とした特殊な空間がつくられます。それを入れ込んだままの設計では普通のオフィスビルにはならないので、今後どういうかたちのオフィスになっていくかは分かりません。われわれの「WTC タワー4」は、幸い政府機関が入る予定の建物なので、特に変更もなく現在順調に進んでいて、おそらくこの建物が一番最初にできると思います。その次に「フリーダム・タワー」ができて、残りはこうした事情で少し遅れるでしょう。グローバリゼーションはこういうところでも、いろいろな意味で影を落としています。

低・中層階平面
低・中層階平面
高層階平面
高層階平面

1階平面
1階平面
オフィス・ロビーとトランジット・ホールを通る低層部断面
オフィス・ロビーとトランジット・ホールを通る低層部断面

«前のページへ最初のページへ次のページへ»