アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合

東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

マークアップリンク
トップ
私の建築手法
槇 文彦 - 近作を語る
イズマイリ・イママット記念館 [2]
2022
2021
2019
2018
2017
2016
2015
2014
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
1986

2008 東西アスファルト事業協同組合講演会

近作を語る - 建築のグローバリゼーションの中で考えること

槇 文彦FUMIHIKO MAKI


«前のページへ最初のページへ次のページへ»
イズマイリ・イママット記念館 [2]

この辺りは、冬は非常に寒く夏は暑いため、アトリウムの屋根は四重のガラスになっています。このガラスは一切アルミを使わず、すべてガスケットで固定されて、鉄骨がむかえにきているというディテールになっています。また水が入った時には屋根の中に入ることなく落とせるように工夫するなど、そうとう勉強しながらつくっていきました。

アトリウムの屋根の外観
アトリウムの屋根の外観
アトリウムの内観
アトリウムの内観

アトリウム屋根の詳細
アトリウム屋根の詳細

ガスケットはドイツのミュンヘンの郊外にあるジョゼフ・ガートナー社というファブリケーターのものを使っています。ジョゼフ・ガートナー社は、難しいいろいろな鉄骨・アルミ系のコンポーネントを一手に引き受けている所です。今フランクフルトで建設されている欧州中央銀行のサッシュもここでやっていますし、それからマッシミリアーノ・フクサスがミラノでやった「フィエラ・ミラノ」もここのガスケットを使った建物です。

さらにそのままだと直射日光が強すぎるので、アトリウムの屋根の内側に鉄骨のフレームをつくり、そこにライト・シェイドをかけています。またイスラムは偶像崇拝を禁止しているので、幾何学を中心としたアルミキャストのスクリーンを四方に回し、その後ろに回廊があります。そしてこのアルミのスクリーンとライト・シェイドを、上のアトリウムの構造から吊しています。

スクリーンやライト・シェイドによって、さまざまな影を落とす
スクリーンやライト・シェイドによって、さまざまな影を落とす

スクリーンは大きなヘキサゴン(六角形)と小さなヘキサゴンの組み合わせで、間の部分はクリアなので、光が入ってくるとさまざまな影を落とします。ライト・シェイドの間からも光が漏れて、一日中全体の雰囲気が変わっていきます。一番外側のガラス、また天幕のあるフレーミングとスクリーンにより、カナダではかなり精密な建物として注目されています。

これもライティング・エンジニアと一緒に工夫して光を調整し、イスラムらしく影自身が幾何学のパターンを形づくっています。夜の風景ではライト・シェイドの所が非常に明るく、様子が変わるようにしています。

中庭から見る夜景
中庭から見る夜景

それからアトリウム部分のフローリングは、大工さんの技術はかなり高いものがあります。またインテリアは全部カナディアン・メープルでやったんですが、なかなかよいクラフトマン・シップでした。

こうしてなんとか6年半の歳月をかけてつくり、2008年12月6日にオープニングがありました。


«前のページへ最初のページへ次のページへ»