アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
六年半ほどオタワでアガ・カーン・ファンデーションの「イズマイリ・イママット記念館」の仕事をしてきました。仏教にたくさんの宗派があるのと同じように、イスラム教にもイズマイリ派というひとつの宗派があり、アガ・カーンはその指導者です。アガ・カーンは平和のための文化活動に非常に関心を持っていて、ファンデーションや病院をつくったりと、中近東を中心に活動しています。イズマイリ派は元もとインドおよびアフガニスタンから出てきていて、現在信者は約1400万人くらいです。イズマイリ派はカナダとは非常に緊密な関係にあるので、アガ・カーンの要求は北米にあるファンデーションのヘッド・クォーターズを全部ここに集約して、また彼自身も年に何回かカナダに来ているので、自分の住居と大きなアセンブリー ・ホール(集会所)をつくりたいということでした。
「イズマイリ・イママット記念館」はサセックス通りに面する敷地に計画されていて、この道路にはオタワ河に沿って外務省、サウジアラビア大使館、日本大使館、アメリカ大使館、市民ホールというように、重要な施設が連なっています。こうした環境の下、アガ・カーンの希望もあって外側はモダンでありながら、中はイスラミツクな雰囲気がよいのではないかということになりました。
正面玄関を入るとエントランス、アトリウムとあり、その後ろにはイスラミツクなガーデンがあります。また外からは見えませんがカンファレンス・ルーム、ファンデーションのオフィス、ライブラリーなどいろいろなものが全体を形づくっています。
この建物は、おそらく世界で最初だと思うんですが、滋賀県の米原に工場がある日本電気硝子の「ネオパリエ」を全面的に使っています。ネオパリエは色のコントロールができるという特徴があり、また非常にハードなので、冬の厳しい気候に対してもよいだろうということです。そういう中でわれわれは、すべて日本で図面にしたがって加工して現地へ持っていって、施工は日本電気硝子の人が監督するというかたちで、カナダの業者がやりました。
アトリウムは、アガ・カーン自身がロック・クリスタル(水晶)を集めているという趣味もあり、それの持っている反射する光、あるいは形を表現してほしいという要望を反映しています。しかしこれも、それぞれのファブリケーターは皆優秀なんですが、結局それをコーディネートするゼネコンが十分な能力を持っていないということで、だいぶ苦労しました。