アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合

東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

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藤森 照信 - 自然を生かした建築のつくり方
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自然を生かした建築のつくり方

藤森 照信TERUNOBU FUJIMORI


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天竜市立秋野不矩美術館
「天竜市立秋野不矩美術館」南側外観

南側外観

静岡県天竜市にある「天竜市立秋野不矩美術館(1997年)」は、私の3つ目の作品です。玄関ホールの柱と梁の架構は、スギの丸太をチェーンソーで粗く削り、私と造園屋さんがバーナーで焼いてから組み上げました。私としては、けっこう面白いことをやったと思っていたのですが、市長がこの組み上がった架構を見上げて「昔の俺の家もそうだった」と言われました。確かに、民家はすすでこんなふうに柱や梁が黒くなっています。それ以降、しばらく木を焼くことはやめました(笑)。日本の古い伝統や記憶等に繋がるものを使いたくないという想いが強くあったため、失敗だと思ったのです。

「天竜市立秋野不矩美術館」南東側外観

南東側外観

外壁は土壁としています。実は、土壁は日本の気候条件には合いません。冬季に土壁に雪が当たると、そこに水が染みて凍り、その部分に陽が当たって凍った部分が溶けるとズズズッと崩れ落ちてしまう、凍結融解が生じます。凍結融解のない土をなんとかつくろうと何度も実験しましたが、どうしても満足するものができませんでした。実験自体は簡単で、粘土にセメントや別のものを入れると、土らしさが残っているものは陽が当たるとぼろぼろになりますが、セメントや合成樹脂に近付いたものはぼろぼろになりません。しかし、そうすると今度は土らしさが失われてしまう。結局、コンクリートを打った後、土色のモルタルをつくり、そこに切り藁を入れてできるだけ粗く塗ります。モルタルが固まった後、地元の山の土を薄く溶いた泥水をハケ塗りします。こうすると土が落ちにくくなり、また、もし落ちても必ず残る部分があるため、土の感じが定着します。一般の方は、土が目に見えていますから、土壁だと思われます。プロの左官は、軒のないところで土壁がもつはずがないとご存知ですから、触ってみて初めて土の裏がモルタルだと分かります。藁が入ってるから土に見えるのだと思います。私はこれ以降、土の仕上げにはすべてこの方法を使用しています。

「天竜市立秋野不矩美術館」玄関ホール

玄関ホール

「天竜市立秋野不矩美術館」第2ホールへ接続する階段を見る

第2ホールへ接続する階段を見る

「天竜市立秋野不矩美術館」2階平面

2階平面

「天竜市立秋野不矩美術館」1階平面

1階平面

ヨーロッパの美術館へ行くと、大人は立って鑑賞しますが、子どもたちはよく座って鑑賞している様子に出会います。それは、子どもたちは、先生に連れられ授業で鑑賞に来ているから、一般の方の邪魔にならないよう、子どもたちは床にペタンと座り、大人はその後ろを通り鑑賞しているのです。その光景から、座る美術館に魅力を感じていました。しかし、日本人の場合は、畳では床に座りますが、土足で歩く場所と同じ場所に座ることには抵抗があります。そこで、この美術館では靴を脱ぐことを考えました。第1展示室(ギャラリー)は床を籐ゴザとし、第2展示室(主展示室)は、床を白大理石としました。床の大理石は、原石を7cmの厚さで挽いただけのもので、研いでいません。よく見るとノコギリの跡があったり、ガタガタになったりしてます。

「天竜市立秋野不矩美術館」第二展示室(主展示室) 床は大理石

第2展示室(主展示室) 床は大理石

「天竜市立秋野不矩美術館」第一展示室(ギャラリー) 床には籐ゴザが敷かれている

第1展示室(ギャラリー) 床には籐ゴザが敷かれている


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