アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
焼杉の製作時の様子
焼杉という技術は、関西にいらっしゃるみなさんにとっては当たり前のものでしょうけれど、実は、名古屋や岐阜県より東の地域では、焼杉はありません。なぜなのか理由は解明されていませんが、滋賀県から九州までは焼杉を用いますが、東京や東日本では、木の板を保存するためには黒土を塗ります。通常、焼杉は外壁の下見板等に使われますが、薄くてペラペラな印象がありました。そこで、厚みのある木を焼けば、炭の仕上げをつくることができるのではないかと考え、岡山の焼杉屋さんへ行き、焼杉についていろいろと教えていただきました。通常は、長さが2メートル、厚みが12~15ミリの板のうち、2~3ミリ焼き込んで使い、それ以上は焼かないそうです。それで、最低80年はもつのだとか。そこで、例えば厚みを2センチにして、そのうち1センチを焼くことはできるのか、長さは2メートル以上のものができるのかを聞いてみると、今までやったことはないけれど、やってみてはどうかとおっしゃるので、試してみるとできることが分かりました。そこから、私は建築に焼杉を使うようになりました。焼杉のつくり方としては、3枚の板を筒状に組み合わせて番線で縛り、足場に立て掛け、下に新聞紙を詰め込み、火を付けます。そうするとこのまま下から上に炎が上り、均質に焼けるのです。
私が焼杉を使うようになってから分かったことですが、関西では建築家は焼杉を使わないそうで、驚きました。なぜ使わないのかと尋ねると、焼杉は大工さんの技術なので、施主が嫌がるからだそうです。「せっかく建築家に設計を頼んだのに、大工さんの技術を使うな」、「書院造りや数寄屋などの技術は使ってもよいが、民家の塀やお蔵の水よけに使われる焼杉は使ってはいけない」というようなことを言われるのだそうです。しかし、私が焼杉を使うようになってから、今ではさまざまなところでどんどん使用されています。実は、私が外国で焼杉を使用したこともあり、焼杉という名前が世界で通用するようになり、世界的にも相当大きなブームになっています。アメリカでは、とんでもない量の焼杉が供給されていて、そのうちに、クオリティの低い焼杉が現れ始めたことが問題となり、今ではアメリカへの焼杉の輸出にすごく力を入れている日本の会社も出てきました。アメリカで焼杉がどのように使われているのかというと、なんとインテリアにも使うのだそうです。日本とは基本的な考え方が異なり、焼杉の上にニスを塗り、壁や天井に張ることで、真っ黒な空間がつくれるのです。ニスを塗ることで、角度によっては光沢のないものになったり、うまくいくと焼杉を焼いた後しばらく現れる虹色の反射を残すことができるらしいです。
南側外観
焼杉を使用した「焼杉ハウス(2007年)」という住宅をご紹介します。外壁は焼杉と漆喰塗りの黒と白の組み合わせとしました。この組み合せですが、最初は黒と白を1対1で並べていました。ふとどこかで見たことがあるなと思ったら、葬式の時に使用する鯨幕だったので、黒と白を2対1くらいにしました(笑)。
庭は、最近ではあまりいろいろやらずに、全部おかめ笹という笹を植えることにしており、「焼杉ハウス」でも使用しました。敷地には元もと素人がつくった中途半端な日本庭園があったのですが、石や木はすべて撤収し、おかめ笹を植えました。外構を含めた全体のイメージは、草原に獣が身を潜めているような雰囲気ですね。
内部は洞窟のような空間を目指しました。洞窟の条件としては、
の4つを考えました。床と壁、天井は、栗の板を張って、表面をサンダーで荒らして仕上げています。火は、暖炉のかたちをしたストーブを設けています。
食堂・居間より見る
食堂・居間よりストーブ側を見る
1階平面
断面詳細