アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
妹島 ルーヴル美術館別館「ルーヴル・ランス(2012年)」の敷地となったランスは、パリから特急列車で1時間半くらい行ったところにある町です。もともと炭鉱で栄えた町ですが、閉山してからは雇用を失い、さびしい町となりました。コンペは、炭鉱の跡地であった三角形状の丘を敷地に、炭鉱時代の遺構がある中に、ルーヴル美術館を設計するというものでした。内部のさまざまな経験をもたらす空間だけではなく、建物がその場所にうまく調和するような建て方を考えたいと思いました。敷地は炭鉱の跡地だったので、引き込み線路や坑道の入口の穴、炭鉱で働いていた人びとのオフィス、等高線、そのほかにも昔の遺産がたくさん残っていました。そうした土地の記憶は壊さずそのまま残して建てようと計画した結果、建物はカーブした形状になりました。当初はもう少し細かいボリュームに分けようとも考えていましたが、最終的には五つのボリュームを中心としたプランにしました。敷地は端から端までで3メートルぐらいの高低差があるので、平屋の建物ですが、屋根は土地の高低差に応じて片流れになっています。同時に、展示室の床も緩やかな勾配があり、その土地に合わせています。
「ルーヴル・ランス」北東より見る夜景
「ルーヴル・ランス」北西より見る。
わずかなカーブを持つボリュームの連なりにより構成
西沢 地面を平らにならして、平らな建築をつくる方が建設コストとしては経済的なのですが、そうすると色々な問題が生じます。たとえば、いくつかの歴史遺産を土に埋めたり、壊したりする必要が出てきてしまいます。また平らにすると、いくら周辺環境と繋がった開放的な建築と言っても、ゼロからすべてつくったような印象を与えるという問題もあります。地方に突然、工業団地ができるような感じで、周りから断ち切られた建築になってしまう気がします。そのため、昔からある丘の地形をそのまま利用した設計としました。
妹島 常設展示室は「時のギャラリー」という名前を持った展示室です。展示物を時代ごとに分けるのではなく、連続的に展示される、大きなワンルームの空間にしました。このギャラリーは、ルーヴル側が設計当初から要望を出していたもので、ルーヴルの紀元前4,000年から1,800年代半ばまでの6,000年分くらいのコレクションを展示する空間です。その膨大な歴史を観て歩く際に、色々な文化を感じること、さまざまな地域、都市、文明を実感できるような空間にしたいという要望でした。パリのルーヴルにはない展示方法で、ランスではじめて、各時代のものをエリアやジャンルを超えて一緒に展示することになりました。内部と外部にアルミニウムの鏡面を使っているのですが、外部の鏡面に佇む物体の姿が内部に入っても連続していて、アートと自分やほかの来館者が一体に感じられるような空間にしようと思いました。また、この地域には、坑道を掘った後の山がいくつかあって世界遺産になっているのですが、「時のギャラリー」の先にある「ガラスパビリオン」にたどり着くと、これらを望むことができます。
「ルーヴル・ランス」常設展示室である「時のギャラリー」
「ルーヴル・ランス」平面