アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
西沢 「ニュー・サウス・ウェールズ州立美術館」という近現代美術館がシドニーにあるのですが、その別館を建てる計画です。敷地は遠方にヨーン・ウッツォン(1918~2008年)の「シドニー・オペラハウス(1973年)」やオフィス街を望む場所で岬の付け根にあたります。敷地を横断する高速道路が通り、高速道路を蓋で塞ぐような形で人工地盤があります。また急激な傾斜を支えるための擁壁があり、斜面の一番下にはオイルタンクが埋まっています。これはかつてヨーロッパ人が入植した際に、船を停めてオイル補給するためのガソリンスタンドのような役割を果たしていました。海のレベルにオイルタンクがあり、その屋根が人工の公園になっていて、さらにその上には傾斜地の土をうける擁壁が2枚あります。敷地はほぼ人工物で埋め尽くされた傾斜地です。土と植物がある自然の場所もわずかにありますが、それは特に希少なものなので、緑地を避けるように建物を計画しました。展示室のボリュームを各レベルに分散配置し、展示室と展示室の隙間をパブリックな空間にして、丘の上の公園からオイルタンクがある地下の展示室まで降りていくという構成です。丘の上から見ると、一見平屋に見えますが、実はどんどん下に向かって展開しています。敷地内には、港沿いに住んでいる人びとが下町のオフィス街まで歩いていく際にこの敷地を横切る、という既存の動線がありまして、その動線も残す形で計画しています。
妹島 敷地内で最も高いレベルにある既存の美術館と新しい美術館を繋ぐエントリープラザは、パブリックゾーンとして開放しています。建物内部は、海に向かって空間が開いていて、展示室を訪れつつ徐々に下に降りていくと、海へ近づいていくような体験が得られます。
西沢 展示室はすべて同じ方向に向いているのではなくて、地形に合わせておのおの角度を振っていたり、異なる眺望で、建築全体としてはイレギュラーな形状になっています。
妹島 一番低いレベルにあるオイルタンクは、天井に穴を開けて階段を追加し、上から入っていける展示空間としました。この部屋に至るまで、さまざまな空間を通りながら海のレベルへと近づいていきます。また建物の外部には通路を設けており、敷地内を歩いて回ることができます。展示室を巡る体験と通路を歩く体験が連続するような計画としました。敷地の一番低い場所にある展示室から外に出て、外部の通路を上がっていくとカフェテラスまで上がり、さらに上がるとエントリープラザに戻ってくることができます。展示室を構成する一つ一つの箱はとても大きいのですが、もともとこの辺りにあるスケール、たとえばオイルタンクのスケールや高速道路上の人工地盤、ランドブリッジのスケールなどと調和させたいと思いながら設計しました。
「Art Gallery of New South Wales Expansion」
エントリーパビリオンよりエントリープラザを見る
「Art Gallery of New South Wales Expansion」配置