アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合

東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

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妹島和世+西沢立衛/SANAA - 環境と建築
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環境と建築

妹島和世+西沢立衛/SANAA
KAZUYO SEJIMA + RYUE NISHIZAWA / SANAA


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グレイス・ファームズ

西沢 「グレイス・ファームズ(2015年)」はアメリカのニュー・ケイナンという小さな町の中に計画した、教会であり、集会場でもある施設です。もともとアメリカの村には教会があり、そこが日曜学校にもなったりして、宗教的な行事に限らず、毎週のように人びとが集まって交流していて、共同体を維持するような機能や役割も担っていました。現在の資本主義化、個人主義化の世の中で、人はあまり教会へ行かなくなってしまっているのですが、それでも町の人びとが集まる場所があるといいよねということでした。一方で、従来のように教会を建てても人は来ないので、子どもが遊べる施設や、地域の人びとが集まれる食堂などを併設することになりました。教会の礼拝堂も、多目的ホールとしても使えるように計画しています。

妹島 多目的ホールには750人ほど収容することができます。小さなライブラリーもあり、ダイニングでは、少しのお金を払えば誰でも食べたり飲んだりすることができます。体育館は天井高が必要なので半地下になっています。この施設でも、どうすればできるだけこの環境を壊さないで建物が計画できるか考えました。はじめは可能な限りコンパクトにした方がよいと思い、機能を全部まとめて1カ所に集約する案を考えましたが、ボリュームの大きな建物になってしまい、斜面の地形に合っていないものになってしまいました。そこで今度はなるべくボリュームを抑えようと思って建物を点在させました。ところが建物自体は小さくまとめることができるものの、建物同士を繋ぐ道路が必要になり、結局はとても大きな範囲の環境が工事車両によって壊されることになります。そこで四つの場所を少しずつ分散させつつ、それぞれを半屋外の屋根でライン状に繋ぐ計画にしました。多目的ホールの客席は敷地の緩やかな傾斜をそのまま引き込んだ勾配です。半地下の体育館は観客席を地上レベルに設けていて、親が子どもの様子を眺めるような場面を想像しながらデザインしました。ニュー・ケイナンはとても寒い地域ですが、不思議なことに皆さん、半屋外の通路を普通に行き来されていますね。建物周辺には湿地帯や大きな池を通る散歩コースもあって、色々な体験を楽しまれているようです。遠方からの訪問者もいらっしゃいます。ニュー・ケイナンはニューヨークから車で1時間半ほどの場所にあるのですが、もともとニューヨークのホテルやビルの中で行われていた難しい問題を話し合う会議を、グレイス・ファームズの会議室で開催したところ、よい議論ができたようで、それからも利用いただいていると聞いています。施設の機能や役割も発展してきているように思います。

「「グレイス・ファームズ」南東に向かってなだらかに下っていく敷地で奥には森と湿地帯が広がっている」の写真

「グレイス・ファームズ」南東に向かってなだらかに下っていく敷地で
奥には森と湿地帯が広がっている

「「犬島 くらしの植物園」配置」の写真

「グレイス・ファームズ」地形に沿って席を配した礼拝スペース。
多目的ホールとしても利用できる

「「グレイス・ファームズ」配置」の図

「グレイス・ファームズ」配置

「「グレイス・ファームズ」半地下の体育館」の写真

「グレイス・ファームズ」半地下の体育館

「「グレイス・ファームズ」庇下空間とパビリオン」の写真

「グレイス・ファームズ」庇下空間とパビリオン


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