アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
妹島 イスラエルのエルサレム旧市街に計画している「ベツァルエル美術デザイン学院新キャンパス」は、元刑務所だった博物館や市役所、またロシア教会に隣接しており、7、8年ごろ前からショッピングストリートとして開発が進んでいた場所です。もともと、ベツァルエル美術デザイン学院はこの敷地からとても近い場所で開校したのですが、規模が拡大したことに伴い、郊外に移設しました。それをもう一度エルサレム市の中心地へ戻すことになりました。この土地は、ユダヤ教やロシア教会の信者など色々な人びとが混ざり合っている場所だったので、美術大学としてそれらを融和する役割を期待されました。設計条件の一つに、ロシア教会側からの眺めを遮ってはいけないというものがあり、眺望を意識して進めています。この学校にはたくさんの学科があるのですが、学校中の生徒が色々なことをミックスしながら勉強していて、何の学科か分からないほどになっています。たとえば写真学科の学生でも、写真と映像と彫刻を組み合わせて、いろんな要素が入り混じった作品を制作しています。色々な学科が並行しながらコミュニケーションが取れたらよいと思い、それぞれの学科をプラットフォーム状にして地形に沿って並べました。学生は色々な場所で作品を展示するので、屋外にもスペースを用意しました。エルサレムでは、外壁のうち70~80パーセントほどをエルサレムの石で仕上げる必要があるので、街中が同じ色の石でつくられています。このキャンパスではそこまでそのルールを意識しなくてよいと言われましたが、水平面が多い建物なので床などはすべてエルサレムの石で仕上げています。エルサレムの石の色に合わせて、コンクリートもクリーム色に調色しています。スラブの積み方もスタディを重ねて、最終的にはいくつかのプラットフォームに分けて、そのプラットフォームの間を動線と光を入れる場所にし、それを積み重ねていくことにしました。一番下のフロアだけは全員共通のワーク、たとえば木工や金工のワークショップができる場所になっていて、残りのフロアはそれぞれの学科が使っています。建物には何層もスリットが入っていて、そのスリットから光が入り、動線が見えるようにしています。ほかの学科の様子や作品が見えることは、互いの刺激にもなると思います。
「ベツァルエル美術デザイン学院新キャンパス」全景イメージ