アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
西沢 「豊島美術館(2010年)」は瀬戸内海の豊島という島につくった美術館で、内藤礼さんの現代作品を永久展示する美術館です。もともと島には農業用水を汲み出す池がありました。豊島は瀬戸内海の島々にしては珍しく水源が豊かな島として知られていて、素晴らしい棚田も広がっています。しかし、このプロジェクトが始まった当時は、農業の後継者が減って、その池もあまり活用されていませんでした。建築は、その池があった場所に建つことになりました。内藤礼さんの作品は、色々なものが室内に展開するのですが、その一つとして、床から泉がこんこんと湧き出てくるということで、床がメインの展示キャンパスになるということでした。僕が提案したのは、水滴のような自由曲線で描かれたワンルームのような空間です。敷地の横には山があったり、地形が豊かなところなのですが、直線で計画すると山をカットする必要があります。しかし、自由曲線であれば、山の地形に合わせた形状にすればよいので敷地に合わせた建築になります。そこで、自由曲線のカーブで1周する建築を計画しました。天井高がとても低いシェルです。普通はもっとライズを取るほうが構造的に有利なのですが、豊島美術館では床が主役と考えて、なるべく天井高を低くして、皆が上の方を見るのでなく、床を自然に見るような形にしました。シェルを低くしたことから、基礎を施工する際に発生した建設残土で山をつくり、それをメス型としてコンクリートを打設するという、土の型枠で施工しました。コンクリート打設が完了した後に、二つの穴から人びとが入っていって土を掻き出し、徐々に空間が表れるという施工プロセスです。この穴にはガラスを入れず、開かれたまま最後まで残しました。ですので室内といっても外で、シェルとして閉じた形でありながら、自然を感じる開かれた感覚もあります。床に生まれてくる泉に雨が合流する、という形となりました。
「豊島美術館」西側遠景。
周囲の等高線と呼応するような自由曲線で構成されたコンクリートシェル構造
「豊島美術館」約40×60m 平面の低く水平に延びる無柱空間のアートスペース
「豊島美術館」平面
「豊島美術館」右側がアートスペース、左手前にカフェ&ショップ
「豊島美術館」配置