アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
少し北海道のことについて話そうと思います。私は北海道とはかなり因縁のある仲です。放浪癖がありまして、大学時代は大学に行かないでブラブラ旅ばかりしていました。まず上野まで行って乗れる電車に乗って行けるところまで行こうというようなことをよくやっていました。あるとき、青森まで夜行の鈍行で行きました。そしたら下北半島のてっぺんまで行きたくなって、そこに着いて海を眺めていたら、さらに室蘭行きのフェリーに乗りたくなって、残りの金もほとんどなかったのにチケットを買って乗ってしまいました。遠くに北海道が見えてきて、「ああ、来たんだなあ」と実感した懐かしい思い出があります。そんなふうにして北海道に最初に出会いました。
小樽にいる従兄弟と一緒に大雪の中、ニセコからチセヌプリを三日ぐらいかけて走破したりもしました。
カーリングで最近有名になったサロマ湖の横の常呂町の若い人たちとも友達で、仕事抜きの付き合いをしています。季節になると常呂町の農協からじゃがいもが届いたり、漁協からホタテが届いたりという交際を続けております。
最近では札幌から一時間ぐらい行ったところにある真狩村に「レストラン・マッカリーナ」というレストランを設計しました。札幌の丸山公園の近くにある「モリエール」というレストランのシェフとグラフィックデザイナーの田中一光さんがもともと中心になられているプロジェクトで、そのお手伝いをしました。結構はやっているそうなので予約が必要ですが、みなさん、ぜひ行ってみてください。
それから、現在進行中ですけれども、旭川の再開発の鉄道高架と駅のデザインをやっています。開通するのが平成二十二年だか三年になりそうだというので、生きているかどうかわかりませんが、通うことは通っています。
また、日本道路公団が十勝川に橋をかけていますが、そのプロジェクトにも参加しています。道路公団が札幌からずっと東のほうに高速道路網を延ばしているんですけれども、その橋のデザインを少し私がいじっています。たぶんもう、かなり出来上がっていると思いますので、みなさん十勝に行ったら、橋脚のところを見てください。「きれいな女の人の足首のような橋脚がほしい」といわれて、力学的にむだなところをそざ落としてデザインしています。そんなこんなで北海道との付き合いが続いています。
今日、干歳から電車に乗って札幌の市内まで来るときに、風景を眺めていました。前々から思っていたことなんですけれども、雪国ですから当然今いろんな工法がありますが、雨樋がつかないので、壁が乾式工法になっています。外壁が大体パネル系の外壁になっています。私が今通っている高知などでは、雨樋がついて、ぴさしを深くして、壁は左官で仕上げますが、北海道ではそうはいきません。北海道なりの風景のつくり方があるんだろうなあと思いました。
ただ、住宅に限らず、一回考え直してみるというのもいいのではないかと思っています。例えば、北海道はシェルターとしての固さ、建物をくるむという思想がもちろん気候が厳しいから強くあるわけですけれども、それをやってきてどうも中間領域というか、内部と外部の中間の場がなかなか見てとれません。建築に関してもしかりです。これはこれからの北海道の大きいテーマかと思います。外と内の中間を建物の中にどうやって取り込めるかが、大きなテーマとしてあるような気がしました。印象ですから、当たっているかどうかわかりませんが、北海道の建物がヨーロッパの建物やアメリカの建物に近く見えるのは、外壁線で切っているから。内と外を切り過ぎているからだという感じもあります。もうちょっと外と解け合うような設計のあり方があるのかなという感しがしました。