アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合

東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

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手塚 貴晴 - 人は建築の向こうに何を見るのか?
屋根の家
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2014 東西アスファルト事業協同組合講演会

人は建築の向こうに何を見るのか?

手塚 貴晴TEZUKA TAKAHARU


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屋根の家

何度も私の講演会にいらっしゃっている方は聞き飽きているかもしれませんが、まずは「屋根の家(2001年)」の話から始めたいと思います。安藤忠雄さんが、講演会ではいつも「住吉の長屋(1976年)」の話を最初にするみたいなものですから、我慢して聞いてくださいね。

「屋根の家」は、私たちのプロジェクトの中でいちばん小さくて、いちばん安いプロジェクトです。「安い」なんて言うと、オーナーさんに怒られてしまいますが(笑)。私たちの設計の進め方として、プロジェクトの初めには、いきなり要望を聞くのではなく、「どんな週末の過ごし方をしていますか」「いつもどんな食事をしていますか」「何の部活をしていましたか」といった、生活に近い情報を聞くようにしています。オーナーさん一家は、以前はごく普通のコンクリート造二階建ての建て売り住宅に住んでいたのですが、このご家族は「私たちはこの屋根の上でいつもご飯を食べるんですよ」と言いながら、窓から屋根にポンッと飛び出すのです。お子さんふたりが二階の屋根の上で笑っている写真を見せていただいたのですが、屋根瓦が少しずれているところがあったり、手すりなどの掴めるところが何もなかったりして、けっこう危ないのです。しかし、ご夫婦は、「屋根に出る時は、私たちがいつも一緒ですから大丈夫ですよ」と、屋根の上に出ることに対して非常に寛容で、挙げ句の果てには、奥さんからは「この場所に火の見櫓があると、きっと向こうに海が見えるんですよ。だから、屋根に登れるところがあれば、他はなんでもよいです」という要望が出てきました。

そうして設計したのがこの「屋根の家」です。屋根の上を楽しむことを想定して、屋根レベルの平面図には一階の平面図と同じくらいたくさんの人を書き込みました。屋根の上で、サッカーをしたり食事をしたりと、とても楽しげです。この屋根は谷のほうに向かって勾配がとられていて、屋根に座り、遠くの弘法山などの景色を眺めることもできます。

以前の家でも屋根の上に登る「屋根の家」オーナーさん家族。
以前の家でも屋根の上に登る「屋根の家」オーナーさん家族。
「屋根の家」一階平面
「屋根の家」一階平面

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