アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
次に、「ふじようちえん」の敷地の南側に、英会話教室とバス待合所をつくってほしいと頼まれ、既存のケヤキの大木の周りに巻き付くように「Ring Around a Tree(2011年)」をつくりました。園長先生から、家具のない教室がよいという要望を受け、高さ五メートルの空間に、七枚の床スラブがあり、階段でそれらを繋いだ半屋外の施設を計画しました。外からは、生い茂ったケヤキの枝葉に紛れて、一見建物がどこにあるのか分かりません。中央のケヤキが要素としていちばん大事なので、それよりも建築のエレメントすべてを細かくする必要があり、床はリブで補強した9ミリ厚の鉄板に、床を支える鉄骨の柱も3センチ角とするなど、家具のスケールに近いものにしました。階高が小さいので、柱が細くてもしっかりと剛性を出すことができ、また、木の根っこになるべく負担がかからないように、地上面ではスラブ型枠を木杭によって仮設的に浮かせています。この建物は、2011年に日本構造デザイン賞という有名な賞をいただきました。
内部には、教室が二室配置されているのですが、そこには家具はなく、子どもたちは段差に座って英会話の授業を受けます。建物の照明は、蛍の群れが木々を中心にして、建物に集まっているイメージでつくっており、建物内部だけでなく、木の枝にも設置しています。子どもたちは、段板の隙間や、低い天井に触れながら、縦横無尽に動き回ります。このように天井高が低いと、子どもたちが頭をぶつけたりして危ない。そこで、まず最初に、うちの子どもたちを建物の中へ入れて動きを試しました。うちの子はふたり共、頭が丈夫なので、ヘルメットをしなくても大丈夫なのです(笑)。そして、うちの子どもが頭をぶつけたところにマーキングをして、安全措置を施します。建物に突き刺さった木の枝を伝って手すりを乗り越えようとしたので、手すりと手すりの間にロープを張りました。そういう行き当たりばったりのことをするのが、実はまた面白いところです。木の成長と共に、危険な場所も少しずつ変わっていくので、またうちの子どもたちを入れて、危ない場所を確認して、ロープの場所を変更します。
子どもたちは木を登ったり、さまざまなところをくぐり抜けたりして遊びます。ちょっとした段差を降りるのを躊躇している子がひとりでもいたりすると、たちまち後ろに子どもの列ができて混雑して困ります。飛び降りるのに自分にとって高さが適当かどうか確認したり、上に登りたがっている子の手を引っ張って助ける子どもいます。きっと、こういうことから、社会を覚えるんでしょうね。
子どもは小さい時にさまざまな経験をしないと、強くならないし、社会も覚えないのです。ちなみに私は、うちの子どもを北アルプスに連れて行ったり、海で泳がせたりしています。小学校低学年ですが、彼らは2〜3キロ沖合まで平気で泳いでいきます。深さ2メートルくらいまで素潜りもできますが、絶対に溺れません。また、海や川に潜っていると、虫や微生物などが無意識に体に入ってきているのですが、そのためか、うちの子どもたちにいわゆるアレルギーなどはありません。やっぱり、そういった体験が子どもにとって大事だと、私は思います。