アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
*有名な『メゾン・ド・ヴェル』です。1936年、ピエール・シャローという建築家がお金持ちの医者のためにつくった、パリのサンジェルマン・デュプレから少し入った一隅に建てられたタウンハウスで、当時いまでいう最もハイテックな建物だったのです。中が居間になっておりまして、外がガラスブロックで覆われている。それだけでなくて、この建物の中に行きますと、当時としては異例なことではあったと思うんですが、パーティションとかバスルームなんかが全部ステンレスでできて、いまでいうインダストリアルデザインの固まりでつくられたような、きわめて発明的要素に満ちた建物です。ここで既にコロナのガラスブロックが使われています。
後年、筑波大学の第一期に建てた『芸術・体育専門学群棟』の壁面は全面ガラスブロックを採用しておりますが、ピエール・シャローがそうであったように、現代の工業化社会が持っているイメージをガラスブロックという物質性に託して表現していこうという姿勢がありますが、このガラスブロックは、われわれ多くの建築家の中でもいろいろなかたちで繰り返し繰り返し使われていくわけです。これがコルビュジエになりますと、ガラスブロックを面的に使うというよりも、よく大きなコンクリートの中にはめ込みで使っていますね。コルビュジエの階段室などによくこのガラスブロックが出てきますが、むしろ窓の代りとして使っています。ただしパリの救世軍の本部の玄間部分ではかなり大胆に面的に採用されております。
*私自身も、先ほど話しましたように『豊田講堂』『立正大学』と、1960年代はずいぶんコンクリートを使いました。しかし打放しのコンクリートは、よほどいい施工をしないと、また環境に恵まれないと都市の汚染された空気や雨水にさらされることによってどうしても耐候性に欠けるところが出てきます。そういうことで、いまから七〜八年前につくりました二つの建物では、少し表面を保護したコンクリートにしております。どちらもホンザネの型枠を使っておりますが、外にエマルジョン系の塗料を吹き付けて、拭取り仕上げをすることによって、十分に打放しコンクリートの質を残しながら、なおかつかなり耐候性のあるものにすることができます。
*ひとつは私の自宅なんですが、実験的にエマルジョン系のものを吹き付けたところと、何も吹き付けないところと二つつくりまして、その後の経過でどのぐらい汚れが違うか調べてみましたら、やはり全然違うんですね。とはいっても、ことし八年目にもう一遍この部分を少し吹き直しております。