アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
*もちろんアンサンブルだけでなくて、逆に対比ということも、材料を使う場合に非常に大事なことです。皆さんご承知の堂島にあります『電通大阪支社』ですが、外装として上部にアルミの持っているひとつの系と1〜2階の石の持つ重厚な系とのニつをぶつけ合わせてつなぐことはできないかというある実験を試みています。これは部分的ではありますが、京都の美術館のデザインヘとつながっています。電通大阪支社はGRCというアルミやポルトガルの花崗岩を使っております。ですから、ここでは色に代表されるグレーが支配するある空間があります。
最近、原広司さんと対談したときに、原さんが盛んに「様相」ということをいっておられたのですが、様相というのはどうやって伝えられるかというと、色で託すこともできるわけですね。赤い空間とか白い状態とか。そういうような様相みたいなものを建築家がどこかで意識の中で持っていて、そこから材料を選んでそれを構築していくということですね。このときにも、実は初めてなんで果たしてアルミと花崗岩とをどうやったらうまく組み合わせられるか、つまりアルミの色をどのくらいにしておくことが自然かということに大変苦労しまして、何種類もアルミのパネルをメーカーにつくっていただいて、それを空中でぶら下げて、実際の自然光による反射を見ながら取合いを考えていったことを記憶しております。
材料は図示することはできません。われわれがドローイングをして図面に「○○仕上げ」と書き込みますね。といったときに、本来であれば既にこういうある状況を掌握していなければいけないのですが、実際のことをいいますと、まあまあ、スタンダードのものを繰り返して使えば同じ結果が出ることはわかるのですが、新しい材料や新しい組合せをやるときにはやはりおっかなびっくりで、現場で材料メーカーからいろいろなサンプルを取り寄せ、組合せを考えて、少しずつ詰めていきます。したがって、私は建築をつくるときには現場主義でして、どっちかというと入札図面ができた時点では、まだ本当に建物になっていないんですね。正直なところ、本当に建築にのり始められるのは、目の前にいろいろな材料が運び込まれて「どれにしましょうか」といったときですね。目の前で建築が決定ざれていくという厳しさの中からデザインの楽しさが生まれてきます。
私はそのほかに、これは日本的な感性かもしれませんが、見え隠れしているような状態−−スクリーンといっていいんですが、スーラの絵ではないんですが、ちょっと向こうの風景がぼけてみえるようなすだれとかスクリーンとかいうものが非常に好きなんです。