アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
*これは、先年日吉につくりました『慶応義塾日吉図書館』の中の階段室です。私は非常に階投に興味を持っています。階段は上と下との空間をつなげていく媒体であり、形態的にも干変万化の可能性を持っております。ですから、先ほどもダイカーの建物と比較して京都の近代美術館の手すりのお話をしましたが、ここでは階段室により中世的な雰囲気を与えたいので手すりには素朴にコンクリートを使い、同時に手すりの変わっていくところはコーナーの頭が尖ったかたちにしてあり、中世的なイメージを増幅させようとしています。岩崎美術館とはまた違ったコンクリートの持っている物質性を何とか発掘できないかという試みがありました。上から天空光がちょっと入ってきて、それなりのひとつのステートメントを持っているわけです。
アアルトを見てもコルビュジエを見ても、ディテールに関してはかなり初期に完成しています。コルビュジエの階段などはどちらかというと、皆さんもご存じのように平板、の鉄にペンキを塗って、きわめて素朴なものが多いのですが、私はどちらかというと想定した場面に応じて材料を選び、形態を選び、そこからまた情景を組み立てていこうというアプローチをしています。したがって、その都度違った形態、ディテールを持った階段室がつくられていきます。
*大阪の泉北にあります『臨海スポーツセンター』で使ったコールテン鋼です。コールテン鋼は、皆さんもご承知のように非常に耐候性のある物質です。付近は潮風が強く、また周縁の工場からさまざまな排出物により空気汚染が進んでいます。これに対していちばん強い材料ということで、コールテン鋼を使ってみました。コールテン鋼を使うということは単にそれなりの材料の使い方だけでなしに、空間のあり方までも決まってくる場合が多いですね。コールテン鋼は非常に性格の強い材料で、建築家の個性を凌駕するところがあることに注意しなければならないのではないでしょうか。打放しコンクリートは、かなり使う建築家によって異なったニュアンスを発現し得る可能性を秘めて}いますが、たとえば、特にコールテン鋼は、どちらかといいますと、だれが使っても同じように材料そのものの優越性が出てくる材料のひとつだと思います。といいますのは、ドイツとかいろいろなところで、私はコールテン鋼の建物を見たのですが、だれがやったのも、コールテン鋼の方が強く出ちゃうんですね。したがってコールテン鋼と取り組むときには、そうした特性に注意して使わなければならないと思います。