アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
*もうひとつ別な材料で最近よく使ってきました、銀色のタイルがあります。これも最初は、坂倉事務所が東京の『パシフィックホテル』でパール系のものを使われました。それから銀だけ抜いたものを、谷口吉生さんが資生堂の『アートハウス』をやられたときに使っております。非常に現代的な感じのする材料ということで、私は『三菱銀行広尾支店』で使いました。幾何学的なかたちを出していくときに、甘くならないんですね。この塔屋の部分は桶のように円の一部によって構成されているのですが、エッジからの反射が、円弧の感じを非常にシャープに出しています。初めはアルミでやろうと思っていたのですが、アルミが非常に高くて手が出なくてシルバータイルに変えました。
この銀色のタイルは外国にないらしくて、先年CRSというヒューストンをベースにした大きな事務所のへッドがきていまして、この建物完成直前に案内したら、『こんなタイルがあるのか』とぴっくりしまして、おみやげに一個持って帰ったことがあるんです。このタイルは最近いろいろなところに出てくるので、われわれは「もう使わない」といっているのですが、最初出てきたころはそれなりのある新鮮さを持っていました。もちろん、いまでも使い方によっては非常に新鮮に使えると思います。たとえば木とか石、煉瓦というのは何百年たっても、われわれが繰り返しチャレンジできるものなんですが、場合によっては工業製品というのは、どこかに一過性の運命を待っていて、何か出てきたときに非常に新鮮に使ってデモンストレートできれば、役目が終わったという感じがしないでもありません。
*これは『YKKゲストハウス』の外壁のタイルです。銀色ではなくて白いタイルです。電信柱も何もない、田園と木だけに囲まれた環境の中で、建築自体の持っている象徴性を非常に強く出したい。そういうときには耐候性があって、なおかつ形態を曖昧にさせないためには、タイルでも白系のタイルがいいんですね。それに幾何学性を重要視しますときには、ウマで継ぐ方がタイル屋さんは喜ぶのですが、どうしてもイモに継ぎます。しかも目地幅も、普通ですと10ミリぐらい欲しいというのですが、それじゃ全然感じが出ないので8ミリとか6ミリとか極限を要求していくわけですね。タイル屋さんは「勘弁してくれ」というのですが……。
もうひとつ大事なことは、目地のモルタルの色ですね。石の建物の場合でも同じなんですが、京都の近代美術館をやりましたときにも、何種類か、目地のモルタルの色をサンプルにつくりまして、現場でなくて工場の方でそれを石と石との間に注入してみて決めていきました。そこで最終的な印象には随分相違が出てくるんですね。つまりタイルでありながら面として見せたいというときには、先ほどいいましたような目地幅とかモルタルの色が決定的な役割を果たしてくるのではないかと思います。