アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
タイ・バンコクの日用品を売っているマーケットです。アジアでごくごく日常的に見かける風景で、陽射しが強いので日除けのテントを覆っています。ただひとつだけ日常の風景と異なることは、マーケットの真ん中を線路が走っていて、たまに電車が入ってきてしまうことです。電車がくると、お店のおばさんたちはテントを畳んで通り過ぎるのを待ち、行ってしまうとまたテントを張って店を再開します。これを私は「レールウェイ・マーケット」と呼んでいます。
この空間は、あらかじめ計画を立てていたら絶対できなかったものだと思います。電車は一日に8回しか通らなくて通過にかかるのは15秒間ぐらいですから、合計しても一日のうち2分間の中断で、そのほかの23時間58分はマーケットとして使えるわけです。普通に考えたら、お店を開くのには特別な用地が必要です。でも、それがなくて済むなら、こんなに経済的なことはありません。
日本でどこかの役所に、土地の有効利用になりますからと線路上のマーケットを企画して申請をしてみたところで絶対に通りませんよね。つまり、これは計画してできるものではないのです。でも、現実にはできている。長い年月と人びとの習慣の中からでき上がったものです。この近くには公設市場があるのですが、もういっぱいになっていて、後からやってきた人は居場所がなく、やむを得ず線路の脇に店を広げ始めたのだと思います。いわゆる不法ですから、邪魔にならないよう、電車がきたらテントは畳みます。そういう習慣が起こってきたときに、だんだん電車のほうも心得てきて、その場所にくると汽笛を鳴らして減速しながら通過していくようになった。つまり、時間と習慣がこの空間を実現したのです。
こういうものは、計画やマスタープランからは決して出てこないもので、それをどうやったらつくれるかということが今日のテーマの根底にあります。