アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
バンコクの中華街にも同様の空間があります。こんな狭い道をバイクや屋台が行き交い、脇には駐車されているバイクやお昼御飯を食べている人がいて、すさまじい状態です。意図的につくろうとしても絶対に不可能です。計画してはできないものだけど、実現しているものが世界各地に存在するのです。
バンコクの「MBKセンター」というデパートです。ここは三階までは普通のちゃんとしたデパートですが、四階は小割りの店舗になっています。下着、時計、ドライフルーツ、携帯電話、金細工といった売り場があって、ゾーニングも何もなくて混乱の極みのような状態です。下着を買いにきた人も、間違って金のネックレスを買って帰ってしまうような感じがします。計画された秩序がないのに、それでも多くのお客さんがきてうまくいっています。
タイのデパートのエスカレータは向きが日本とは逆です。日本では昇ったところで折り返して上階に続きますが、タイでは反対側に行かないとつながっていません。なぜかというと、お客さんができるだけ多くの商品を見て、目的の商品以外のものも買ってもらおうとわざと遠回りにしているのです。日本ではドンキホーテやマツモトキヨシがこの手法を真似ていますね。一度に視野に入る商品量をできるだけ多くするために、足に突っかかるぐらい通路にはみ出して商品が置いてあります。もともと秩序立って置かれているものではなくて、その中で溢れてくるもの、それが多くの人の目に触れて偶発的に商品が買われるという複雑な構造です。
シンガポールのチャイナタウンにある「チャイナタウンコンプレックス」というマーケットは、一見似ていますが、実はタイのデパートとまったく異なります。一番下の階はトラックヤードで、トラックヤードから直接つながっているフロアは生鮮食品売り場で、一階(地上から見ると半階上がったレベル)は靴や洋服の日常品売り場です。それを通り越すと最上階は屋台村のようなフードコートです。シンガポールのデパートは、階ごとに商品が分別されていて、アジアの中で唯一きちんと計画されてできているということができます。
私たちはシンガポール型の、ある秩序を立ててゾーニングをし、整理整頓する方法を学んできました。でも、きちんと整頓することや、それを維持するためには多大なエネルギーが必要です。それに対して、バンコクのデパートなどはエネルギーをさほどかけません。しかし、思いもしなかった効果が出てくる可能性もあります。シンガポール型は、予想を越えた何かが起こるとそれに対応しにくいものです。秩序立って計画されたものがもつある種の限界というものがわかってきました。