アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
「はこだて未来大学」のコンペ案です。北海道では農産や畜産以外の理科系の大学がないため、情報関係の新しい大学を函館市内から少し離れた丘の上に計画するというものでした。ちなみに一等は山本理顕さんの案で、すでに竣工しています。
私が提案した案は、研究室棟や教室棟のように機能分化した状態で建物をつくるのでなくて、できるだけいろいろなタイプの場所をつくっておいて必要に応じて使うというものです。かたちそのものは季節風や吹きだまりなどの気象や地形の条件から導き出しました。
ですから、50人が集まって授業をするときには50人にちょうど合った場所を選んで、そこをコンピュータで予約しますし、5〜6人の班ごとに作業するときには、もっと快適にできるラウンジのような場所を使います。情報系の大学だからこそ、決められた教室のような場所ではなくて、バラエティに富んだいろいろな場所を自由に組み合わせて使うという提案をしました。
要項には大学を市民に開放することが挙げられていましたが、函館から8キロメートル離れた丘陵の上では、開放しても、くるのはたぶん牛ぐらいです。市民が頻繁にやってくるとは思えません。そこで、私たちはキャンパスの中に24時間通り抜けができるコリドールを設けて、市立図書館の分館を置いてはどうかと提案しました。さらには市民が食堂や喫茶店を開いたり、学生がパソコン教室を開いたりできるようなテナントの場所も確保しておきます。つまり、大学の施設の中に、外部社会を盛り込んではどうかと提案したのです。人間の口から食物が入って胃袋を通って出ていくという消化器官は、体の中に入っているけれど空間としては外部ですよね。外の空間が体の中を通り抜けている状態で、そこを介して栄養分や水分を摂取して老廃物を排泄しているわけです。消化器官が酸素や栄養を接種するのと同じように、地域社会と接点となるような空間を大学内に通そうとしたのです。
最終の五案まで残っていましたが、ヒアリングのとき、市の助役さんに「ぐるぐるとした丸いものが建物の中に入っているとデッドスペースがあちこちにできませんか?」と聞かれてうまく答えられず、あえなく落選となりました。しかし、単純に門戸を開いただけでは市民に対しての開放にはならないと思うのです。もう少し積極的な接点を空間としてもたないと、本当の意味での開放にはなりません。残念ながら落選したため、今も「ミライのタネ」状態です。
都市あるいは建築は一時として静止していない、常に変遷・変化していくものだと考えるとき、人体はよいモデルになります。動的に変化していくこと自体をうまく取り込んで、建築を考えるべきだと思います。