アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
タイペイも面白い街です。何回も増築された跡がある建物が、街に溢れています。屋上には必ず違法な増築がされて、さらにその上にも増築されていく。まるで自己増殖するような街で、公的な領域と私的な領域も不分明で境界がわかりません。面積が同じアパートでも、最上階の方がその下の階の家賃より高いのは、増築ができるからです。駐車しているタクシーのボンネットだって海草干しに使ってしまうし、空いているところは何でも使うというある種のバイタリティとメカニズムに、そのおもしろさのヒントがあるように思います。
「動的な脳」の話をしましたが、都市や建築も固まったマスタープランではなく、動的に、絶えず動いている中ででき上がっていきます。「ここが空いているから使おう」とか「こういう使い方ができるんじゃないか」ということが試みられないと、脳細胞の活動は起こらないのです。その活動は誰がやっているかというと、計画者である設計者でも市役所でもありません。
使っている人がやっていることなのです。建築を使う人あるいは都市で生活する人はその中で絶えず「狭いから広げたい」とか「空いているから使いたい」という活動をしていて、それが充満することではじめて都市や建築は生きてくるのだと思います。
そうして見ると、私たち人間は建物とか都市といった固いものの中に住んでいますが、脳細胞や体の中を行ったりきたりしている血液のように見えてきます。つまり、まるで人間がヘモグロビンのように酸素を運んだり不要になった老廃物を運び出したりしているのです。壊れているところを直したり、隙間があったらそこでお店を開いたりして、絶えず人が出入りしています。逆に人がいなくなった家は荒れて壊れていきますし、人が住まなくなった都市も急速に荒廃していきます。そのメカニズムも人間が建築や都市にとって血液のようなものだと考えると非常によくわかるのではないでしょうか。