アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
香港の大アオ(サンズイに奥)という集落は、新しく空港のできたランタオ島の西側にある漁村です。もともとは河口地帯で、漁師が船で生活をしていた場所です。漁師が水の上ではなく、丘の上で生活しようとしてできてきたセルフビルドの集落です。昔の家舟がそのまま家化したようで、全部が船の部材でできています。船は舷側を接して並んでいると、移動するためには人の船の甲板を歩かなくてはなりません。その感じがそのまま残っていて、甲板部分にあたるところを人が自由に通っていくのです。開口部の割り合いなども興味深い、自己増殖的なおもしろい街です。
同じ水の街ですが、ベニスは石でできている街です。ベニスは道の代わりに運河がありますが、実際には路もあります。普通の都市は建物を黒く塗ると残りが白くなるだけですが、ベニスは黒と白と水色が混ざりあって、複雑で面白い状態になります。
ベニスが生んだ建築家のカルロ・スカルパは注目すべき人です。1948年ビエンナーレのパウル・クレーのパビリオンで、絵を額に入れずにそのまま屏風のようなパネルにして展示しました。そのパネルは勝手に自立しているような状態でありながら、それぞれが関連し合っています。
この考え方をスカルパは終始使っていきます。ベローナのカステル・ベッキオ美術館も、彫刻の置かれたスペースのひとつひとつは固有性をもち独立しているのですが、自由に連なりながら関係し調和しているのです。ここには何の規則性も繰り返しもルールもなく、まったく違うものだけが組み合わさっていながら不思議に融合して、いい関係をつくつています。
この考え方が都市にとっても大事だと思います。街をきれいにしようと思ったときには、建物のデザインを揃えようと考えます。しかし、建物のデザインを統一することで街がきれいになるのは当たり前ですが、現実にそうつくることはきわめて難しいものです。ところがスカルパは、自分がつくつたもののみならず、昔からあった教会の塔まで含めて、異なったものを組み合わせて全体を調和させています。この原理を私たちもいま考えなくてはいけないと思います。都市デザインを考えるとき、ユニフォームをつくってすべての建物の外観をお揃いにするではなくて、それぞれが個性をもつ違うものが隣り合っても美しくなる方法を模索することが必要だと思います。