アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
「今治市伊東豊雄建築ミュージアム」から少し離れた場所に、彫刻家の岩田健さんの、「今治市岩田健母と子のミュージアム」という小さな彫刻の庭をつくりました。これは「大三島ふるさと憩の家」という民宿に併設しています。「大三島ふるさと憩の家」は廃校になった昔の小学校を、宿泊施設として使っているものです。私たちもよく泊まっていまして、実はこの間もここで夜中の三時くらいまで建築の話をしていました。
「今治市岩田健母と子のミュージアム」は、直径30メートルの円形の壁で構成されており、岩田健さんの44体の彫刻が、さまざまな高さに、さまざまな向きに置かれています。岩田健さんは現在87歳で、戦争中は特攻隊員だった方です。飛び立つ直前に戦争が終わり、その後東京藝術大学で彫刻を勉強して、母と子をテーマにした優しい彫刻ばかりをずっとつくり続けてきました。慶應義塾幼稚舎で何十年も工作を教えてこられた、本当に優しい人です。その彫刻を、岩田さん本人が建築も含めてすべて寄贈されました。ここで面白いのは、一枚の壁を一周まわしただけなのに、周りの風景の見え方も、波の音なども変わったことです。そしてこの中に、彫刻がたくさん置かれることによって、彫刻はひとつの時とはまったく違った意味を持ち始めます。彫刻には力の方向があるのです。上に向かって伸びていく彫刻、下へ向かっていく彫刻、そういう力のベクトルが互いに交差し合って、不思議な空間が生まれています。
岩田さんは慶應義塾幼稚舎で、石原三兄弟や千住三兄弟などいろいろな人を教えてこられました。このミュージアムのオープニング式典では、作曲家でご兄弟の次男の千住明さんがつくった曲を、長女でバイオリニストの千住真理子さんがストラディバリウスを使って弾いてくださいました。とてもよいオープニングでした。
ここではミュージアムの閉館後にコンサートが行われたり、パーティをしたりするのですが、公共建築は街の人がそうやって使うべきところだと私は思うのです。先ほどのお話の「シルバーハット」も、ちょうど真正面に夕日が沈み、夕日の時間が最も景色が綺麗なのですが、その時間には閉館してしまう。閉館した後も、お酒を飲みながら街について語り合うような場所にしてくださいと交渉しているところです。