アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合

東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

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伊東豊雄 - 東日本大震災後の一年を考える
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東日本大震災後の一年を考える

伊東 豊雄TOYO ITO


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マーケットストリートオフィスタワー
「マーケットストリートオフィスタワー」ファサードのイメージ
「マーケットストリートオフィスタワー」ファサードのイメージ。手前が「アーバン・ファサード」、奥が「グリーン・ファサード」
「マーケットストリートオフィスタワー」俯瞰CG
「マーケットストリートオフィスタワー」俯瞰CG。

「マーケットストリートオフィスタワー(2007年〜)」は、高さ242メートル、40階建ての高層オフィスビルの計画です。シンガポールの金融の中心であるラッフルズ広場のすぐ近くが敷地です。周辺には丹下健三さんと黒川紀章(1934〜2007年)さんが設計した300メートル級のタワーが2本あり、他にも250メートル級のタワーがいくつか林立する高層ビル群の中のひとつになります。

面白いのは、シンガポールではURA(Urban Redevelopment Authority :都市再開発局)が都市再開発局全体の建築をコントロールしていて、そこで250メートル級の高さの高層建築をつくらなければいけないという規定があることです。今回、この建物では200メートルで容積率の容積は全部満たされるため、残り50メートル分が余ってしまいます。そこで、その50メートル分に「スカイフォレスト」と呼ぶ森をつくりました。

オフィスエリアは大きく全体が三層に分かれており、その間に「スカイテラス」と呼んでいる三〜四層吹き抜けのテラスがあります。最上階に一番大きい「スカイフォレスト」があります。一階は、世界で最も人気のあるアーティストであるオラファー・エリアソンと組んでアートを巡らせます。彼がこの緑に反応して、非常に有機的なアートをつくろうとしてくれています。

250メートル級の高さのある建築だと、地上と250メートル上空とでは温度が2〜3度ほど違います。上の方が涼しく、空気が綺麗です。また、シンガポールのこのエリアでは夏と冬にいつも同じ方向に風が吹くという特性があるので、それを利用し、上空の綺麗な空気を屋上から建物の中に取り入れることを考えました。それを「スカイフォレスト」の森でつくられる新鮮な空気と共に、建物中心を貫通する「クールボイド」からファンで各階へ送り込みます。そして各階ごとに空調機で空調をして、空気を緑のテラスを経て外に出すという、サーキュレーションを考えます。この建築自身が大きな一本の樹木のように呼吸しているイメージのオフィスビルをつくろうとしています。

左:「グリーン・ファサード」断面 右:「アーバン・ファサード 」断面
左:「グリーン・ファサード」断面
右:「アーバン・ファサード 」断面
「スカイフォレスト」断面
「スカイフォレスト」断面。南北の定常風をつかまえ、新鮮で冷たい空気をオフィスに供給する。

「マーケットストリートオフィスタワー」断面
「マーケットストリートオフィスタワー」断面
「マーケットストリートオフィスタワー」44階「スカイフォレスト」平面
「マーケットストリートオフィスタワー」44階「スカイフォレスト」平面
「マーケットストリートオフィスタワー」1階配置平面
「マーケットストリートオフィスタワー」1階配置平面

立面は、「グリーン・ファサード」と「アーバン・ファサード」という二種類のファサードが螺旋を描きながら混ざり合うことで構成されています。「グリーン・ファサード」ではオフィスの外周部にプランターを設け、風除けのために粗いルーバー状のガラスを付けます。「アーバン・ファサード」はダブルスキンのように二重のガラスで遮熱をしています。

シンガポールは数十年前までジャングルだったところですが、建設が進み、どんどん緑が減っていきました。街の緑はなかなか綺麗に整備されていて、最近の建物は、一部壁面緑化されたり、大きなテラスをつくって屋上緑化されたりしているのですが、今回のプロジェクトではそれをもっと進めて、地上の緑が壁面から屋上にまで立ち上がっていくような建物をつくる、というコンセプトです。世界的な金融ビジネス産業の中心であるシンガポールにおいて、都市と自然との関わり方の新しい提案をしようとしています。

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