アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合

東西アスファルト事業協同組合講演録より 私の建築手法

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伊東豊雄 - 東日本大震災後の一年を考える
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2011 東西アスファルト事業協同組合講演会

東日本大震災後の一年を考える

伊東 豊雄TOYO ITO


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みんなの森 ぎふメディアコスモス

「みんなの森 ぎふメディアコスモス(2011〜)」は、2011年の二月にコンペティションが行われて、今、実施設計の最終段階が進んでいるプロジェクトです。2012年の秋には着工して、2014年の春頃にはできる予定です。

「みんなの森 ぎふメディアコスモス」西側俯瞰イメージ
「みんなの森 ぎふメディアコスモス」西側俯瞰イメージ。
「みんなの森 ぎふメディアコスモス」模型俯瞰
「みんなの森 ぎふメディアコスモス」模型俯瞰。

岐阜駅から歩いて長良川の方向へ20分ほどの場所が敷地です。岐阜大学医学部の広大な土地が移転によって空き、そこを市が買い取って「せんだいメディアテーク」のような図書館を中心とした施設をつくるという計画です。将来この敷地に市庁舎を移して、広場を挟んで向かい合わせる構想になっています。また、敷地西側に駅からつながる並木のプロムナードを市が計画中です。非常に広い敷地なので、できるだけ低層にすることを計画しました。長手が90メートル、短手方向が86メートルほどの二層の建物です。

一階には南側の広場と向かい合う大きなテラスと、金華山と向かい合うようなテラスがあり、西側は西日を遮る目的もあって、並木に面して奥行3メートルのテラスがあります。

一階は中央にガラス張りの閉架の書庫を置きました。南側がメインのエントランスですが、東、西、北、それぞれ通り抜けできるような四方向のエントランスをつくっています。オープンなギャラリースペース、閉ざされたギャラリースペース、250席くらいのレクチャーホール、ワークショップをするようなスタジオがいくつかと、北側に図書館のオフィスがあります。

「みんなの森 ぎふメディアコスモス」2階平面
「みんなの森 ぎふメディアコスモス」2階平面
「みんなの森 ぎふメディアコスモス」1階平面
「みんなの森 ぎふメディアコスモス」1階平面

二階は不思議な空間になっており、大きくうねる天井からグローブと呼ばれる丸い帽子のようなものが吊られる図書館になっています。グローブの下は開架の閲覧スペースとして展開され、その周辺に放射状を描く書架が分類別に並べられます。全部で11個のグローブがあり、大きいものは直径で15メートル、小さいものでも8メートルの、結構大きなスペースです。グローブの下の閲覧スペースにはさまざまなものがあり、たとえばブラウジングと呼んでいる、リラックスしてゆったりとソファに座るような読書スペースや、受験生が勉強するような、きちんとしたデスクのスペースもあります。児童書用のグローブはふたつあり、その下では寝転がって本が読めます。二階のエスカレータ前にインフォメーションがあり、そこで探している本を言うと、どこのグローブにその本があるかが分かります。そしてその周辺を一周すれば、大体探していた本が見つかるという仕組みです。窓際にも緑に面して閲覧スペースが置かれることになると思います。

「みんなの森 ぎふメディアコスモス」2階閲覧室イメージ
「みんなの森 ぎふメディアコスモス」2階閲覧室イメージ。
「みんなの森 ぎふメディアコスモス」南側外観イメージ
「みんなの森 ぎふメディアコスモス」南側外観イメージ。広場とメインエントランスを見る。

グローブはポリエステル系の素材で、三軸織り[注7]という特殊な織り方で非常に軽い立体をつくろうとしています。素材はグラスファイバーですが、惑星探査機「はやぶさ」のアンテナなどにも同様に三軸織りが使われています。

木造シェル屋根の模型
木造シェル屋根の模型。

屋根は軽量な木造シェル構造で、屋根が低くなっている箇所を鉄骨柱で支えます。集成材のように接着剤を使わず、住宅規格サイズの12×4センチという非常に小さな材を三方向に流して組み合わせ、10層のレイヤーとして厚み40センチ程度の木造のシェルをつくっています。屋根の低いところは曲げモーメントが大きくかかるので、屋根を厚くし、レイヤーを重ねる必要があるのに対して、一番高いところはモーメントが小さいので屋根を薄く、レイヤーを少なくすることができます。そこで屋根の高い部分から採光しています。

「みんなの森 ぎふメディアコスモス」エネルギーの概念図
「みんなの森 ぎふメディアコスモス」エネルギーの概念図。

この場所は長良川の近くなので地下水、伏流水が非常に豊富です。それを汲み上げて、ヒートポンプによって熱交換をします。暖められた空気、あるいは、冷やされた空気が、一階と二階のコンクリートの床の中を流れて、床から輻射冷暖房としています。さらにその空気がほぼ一室空間の一階、二階をゆっくり循環します。屋根の一番高いところが自動開閉式換気口になっており、夏はここから煙突効果によって排気されます。冬は換気口を閉ざして、小さなファンで循環させます。つまりグローブの下は、上から光が落ちてきて、明るく、熱的にも一番快適な、居心地のよい場所になります。さらに太陽光のソーラーパネルが置かれ、雨水の排水も利用されます。

岐阜の人たちが一番自慢にしているのは長良川と、信長が居城をつくった金華山です。設備的な提案から生まれてきた波打つ屋根が、この里山の景観に合うと思っています。外周は一部鉄板もありますが、木製の格子状の方立てが立つファサードになります。建物の周辺に木を植えて緑を豊かにして、緑が建築の中まで入り込んでくるような、緑と相関するような空間をつくりたいと思っています。

このように、あらゆる自然エネルギーをできるだけ使い、従来の同規模の施設に比べて消費エネルギーを二分の一にするという目標を立て、コンペティションに臨みました。実施設計の段階でARUP JAPAN と一緒に構造と設備を検討し、目標が十分に達成できるという見通しが立っています。

今回の大震災で、原子力発電の問題がずいぶん話されていますが、私たちが建築家として福島原子力発電所の事故に対して何ができるかというと、何もできないのが現状です。ただし、原子力発電に対して反対するとすれば、自然エネルギーで日本をまかなっていけるのか、という問題を考えなければいけません。その時に、消費エネルギーを減らすということに対してなら、建築家として考えることはたくさんあります。

これはちょうど震災の一カ月前のコンペティションだったのですけれども、非常にタイムリーな提案だったと思っています。このようなプロジェクトが、エネルギーや素材の問題に対して、私たちが考えている震災後の建築のイメージに一番近いと思います。

[注7] 繊維などの素材を縦、横、斜めの三方向に竹籠のように編む織り方。

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