アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
「ヤオコー川越美術館(2011年)」は、昭和後期から平成にかけて活躍された油絵の画家である三栖右嗣(1927〜2010年)さんの小さな記念館です。2012年3月11日にオープンした新しい作品です。
建物は鉄筋コンクリート造の四角い箱で、四部屋に分かれています。そのうちふたつが展示室で、残りふたつがそれぞれエントランスホールとラウンジという、非常に単純な構成です。まだ緑が育っていないのですが、建物周辺を水で囲んで、外構を少し散策できるようにした、小さな美術館です。
外壁は打ち放しコンクリートでできています。エントランスのカーブに沿って少し壁を湾曲させることで、空間が少し柔らかい印象になりました。室内は、展示室を進むに従って徐々に明るくなっていきます。私はホワイトキューブという、どの絵も均質に見える空間はつくりたくない。何とかしてそれを少しでも変えたいと思っています。今回は、企画展ではなくすべて常設の展示ですから、展示に沿って変化する空間をつくることも許されるかと思い、提案しました。
まず第一の部屋にはイントロダクションがあり、受付のカウンターがあります。第二の部屋には、三栖さんの代表作である「老いる(1975年)」という作品の習作があります。これは三栖さんが40代の時にお母さんを題材に描かれたもので、第19回安井曾太郎賞(1976年)を取られたデビュー作でもあります。残念ながら、三栖さんは2010年に82歳で亡くなられ、美術館のオープンには間に合いませんでした。非常に内面的な絵を初期に描かれていたので、初期の作品の部屋は、作品のイメージに合うように屋根がそのまま地下に下りていくような構成にしました。下りてきた屋根の足下からの照明が、大地から湧き上がる光のような印象を与えます。
三番目の部屋は、逆に天井が富士山のように盛り上がっています。ここではトップライトからの自然光が屋根を伝って部屋全体に降り注ぎ、空を見上げた時の光のような印象を与えます。三栖さんは後期にはスペインなどにも行かれて明るい絵を描かれているので、それに対応するように、第二の部屋から進むにつれて光の印象が変わっていくような部屋にしました。
最後の部屋は、天井全面にわたるトップライトからの自然光にあふれた空間になっています。ここにはラウンジがあり、コーヒーが飲めます。ここは街の人たちも、小さなレクチャーや集会に使ったりできるような部屋です。ここに「爛熳(1993年)」という大きな桜の絵がかかっていて、ラウンジを出たところに植えられている一本のしだれ桜や、美術館の前の桜並木とが呼応して、桜づくしの空間となっています。