アスファルト防水のエキスパート 東西アスファルト事業協同組合
「松山煙草工場跡地文化園区BOT計画(2008〜)」は、台北市の中心部に位置する「松山煙草工場」の跡地における再開発計画です。これは1930年頃の日本統治時代に建設された煙草工場で、それを一部取り壊し、一部は保存して、文化的な、ランドスケープを含めた再開発を市が行っています。ランドスケープに関しては私たちも監修しました。
メインの工場の他にも既存の工場が残されていましたが、これはそこまで重要な建物でもないということで、壊されました。その跡地に私たちが、オフィス、ホテル、商業建築の複合施設をつくっています。敷地には古くから池があり、それを囲む庭園も整備します。
オランダにもいくつか例がありますが、1930年代、「工場は未来的な生活のユートピアである」という思想の下に工場を建設した時代がありました。この煙草工場も単に働く場所ではなく、そこに食堂やお風呂などの保養施設、あるいはランドスケープなどが一体となって、これからの人びとの新しい働く場所をつくっていくという思想の下につくられています。当時の古い写真によると、中庭にはフランス式の庭園がつくられていたりしたようです。
現在、旧工場は新しい文化的なギャラリーやアトリエとして再生しつつあり、池を囲む庭園の整備も終わりつつあります。私たちが計画している建物は工事中で、2013年には竣工の予定です。建物自体は、オフィス部分が全部で10万平米くらいあり、ホテルや本屋などの文化的な商業施設と、地下には映画館や劇場も入っています。さらにその下に駐車場があります。一階は通り抜けの通路を持ったふたつの広場に面している空間です。中間階のテラスの奥には本屋やカフェがあります。屋上も緑化をして、パーティや会議をするような空間になります。テラスと屋内を一体化して使う計画です。
敷地は、ドーム型スタジアムや大型商業施設などに隣接する再開発の中心となるエリアに位置しています。保存される旧煙草工場に向かい合うかたちで、私たちがいきなり高層の建物を計画するととてもバランスが悪くなってしまいます。そこで、旧工場との間に多様なイベントに活用できる大きな広場を取り、セットバックしながら徐々に積層していく建物を計画しました。台北市という都市の大きなスケールから、小さいヒューマンスケールに落としていくために、階段状の緑のテラスによって広場と一体の空間をつくり、スケールダウンを試みました。また、建物の南東側にある池の前には芝生の広場を整備します。このように、都市的なスケールから、古跡や池を囲む広場のような静かでヒューマンスケールの環境まで、ひとつの建築の中でスケールの異なる場所に対応することを試みています。